霧の都

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 その光を見たジェシカは橋のポンプのスイッチを操作して、レバーを倒した。ほぼ垂直だった二枚の橋板が水平になって合わさると、正門から突入してきたカークのトラックが橋を渡った。市庁舎前の広場で停まると荷台から赤の部隊が降り、市民を解放する戦いが始まった。  奇襲と救助作戦の成功に一安心したタキトだが、下層から金物を乱暴に叩くような音が聞こえた。  手すりから身を乗り出して下を見ると、鎧を着ている琥珀団は階段から飛ぶと垂直に立つパイプを鋼鉄のブーツで蹴って、上の階段に移った。恐るべき身体能力の高さに、慌てて信号銃に新しい弾を込めた。飛び蹴りを数回繰り返して琥珀団はタキトのいる最上階に着地すると、拳銃をタキトに向ける。今から自分が狙っても間に合わない。  そこで、水平に撃たずに床に向けて撃った。ゆっくりと発射された信号弾はねずみ花火のように床を滑り、炸裂した弾の火はマントに引火した。  炎に包まれた琥珀団は踊り、持っていた拳銃や膨らんだ袋の紐が焼き切れて床に落ちた。鎧を着ているので火傷を負わなかったが、マントを脱ぎ捨てた琥珀団は怒り狂う。 「貴様! こうなった事を後悔するぞ!」  そう言うと、管理人部屋にあったランプを燃えるマントに放り込んだ。ガラスが割れる音と共に中の油が流れ、炎は廊下を塞ぐまで大きくなった。熱風にタキトは退いた。  その頃、外では赤の部隊がラプトルを撃退し、ライトを灯すトラックが琥珀団を追い散らしていた。捕らわれていた街の人達も次々と解放される。  琥珀団は防戦の撤退をしながらトリケラトプスに牽かせる竜車に木箱を満載して、街の裏門から脱出を始めた。門をくぐる同胞を見た配水塔の琥珀の戦士は窓を開けた。  そして、両手を肩の高さに水平に上げると、・・・飛び降りた!  いや、飛んでいる。戦士はハンググライダーを背負っていた。空中で三角の翼を広げて、風に乗ると防護壁を越えて夜空に消えていった。
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