激闘の鉱山

2/11
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
 さて、行動開始だ。タキトはパラモーターのエンジンを始動させた。複座にいるアイナは琥珀団から鹵獲した回転式拳銃と弾。多種の工具、トランシーバー、懐中電灯を入れたリュックを正面に抱えている。  エンジンの風を受けたパラシュートは膨らみ、夜空に上がった。  作戦を大まかに語ると、二人は空から鉱山に入り、騎士団はガリミムスで突入する班と投石器で後方支援する班に分かれる。  脱獄した人の話によると、人は小屋に二百人。草食恐竜は屋根の狭い檻に三十頭。それには投石器で放った石が強制労働させられている労働者と恐竜に落ちないよう正確な位置を伝えないといけない。  アイナはオカリナで恐竜と『会話』できるので、囚われている恐竜を落ち着かせる事も逃げる事も伝えられる。それだけ重要な役目だから、銃とパラモーターとトランシーバーが使えるタキトが適任だ。最も、タキト自ら名乗り出たのだが。  二人を乗せたパラモーターが鉱山に近づくにつれ、石の柱は大きさを増す。高さは鉄塔くらいあるだろう。クラウスが言った通り、含有物質で岩の色が所々違う。奥の方には水量豊富な池もある。  タキトはおおよその所でエンジンを切って、静かに降下を始めた。着地と同時に小走りをしながら衝撃を緩和すると、パラシュートもしぼんで落ちた。  タキトが砦の革職人に作ってもらったベルトの拳銃ホルスターの位置を確かめ、リュックを背負っていると、アイナが地面を指した。  二本の鉄の路が敷かれている。線路だ。箱型の貨車もある。琥珀団が霧の都から軽便鉄道の機材を奪った理由はこれだったのか。拳銃と弓矢を手に、二人は線路を辿った。  線路の先の鉱山中心部は驚くほど開けていた。貨車から鉱石を降ろす場所、選鉱所、丸太を組んだ見張りのいない監視塔、粗末な小屋、大小の檻がある。  唯一、灯かりがあるのが山の中腹にある石造りの立派な建物。琥珀団はあそこで寝泊まりしている。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!