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まずは人質のいる牢屋に向かった。すきま風が通り抜けそうな粗末な丸太で建てられ、入口は鉄格子。
薄い布を敷いただけの床に老若男女が隙間なく横になり、皿とコップが片隅に積み上げられている。足音で何人か起き上がった。
タキトは小声で助けに来た事を伝えた。しかし、この格子扉は頑丈に固定されている。車で引っ張らないと無理だ。なので、足の鎖を外す金ノコやヤスリをあるだけ渡した。囚われの労働者達は頷くと、脱獄の準備に入った。
次は恐竜の檻。アンキロサウルスに似た〈武装頭〉のユーオプロケファルスが体ぎりぎりの檻に入れられている。土木作業の恐竜として人間社会に浸透していて、野性でも必要な時に呼べば自分から来るという人間社会に友好的な性格だ。
特徴は尻尾のハンマー。これを使う事で杭打ちや岩を砕く作業に適しているが、この鉱山では不運な役としか言いようがない。
しかも、子供と大人の檻に分けられている。働かなければ子供に危害を加えるという親恐竜への脅しだ。琥珀団のやり方は徹底している。
自分達の気配を察した恐竜の子が目を開けた。別の檻の親恐竜達も起きた。タキトが人差し指を口に当てると、その意味を覚った恐竜達は目配せで同族に伝えた。
恐竜の檻の鍵は人間のとは違って、T型の金具を縦穴に通してあるだけだ。ラプトル族を除いて、恐竜は前足を人間の手のように動かす事は出来ないので頑丈であれば簡単な施錠で済む。それだけに、恐竜を愚劣する琥珀団への怒りが増した。
タキトは崖で待機しているマイクにトランシーバーで鉱山の敷地構成を伝えた。情報を得たマイクとカークはジープとトラックのエンジンをかけ、騎兵隊も恐竜に跨った。
マイク達が来るまでの間、恐竜を逃がそうと格子扉の金具に手を伸ばした。
その時、中の子供が騒いだ。直感的に後ろを振り返ると琥珀団がいた。鉄仮面の奥でギラギラとした琥珀色の目がこちらを見下ろし、月の光を受ける剣が振り下ろされた。
タキトとアイナは左右に跳んだ。剣は二人の間を通り抜けて地面に食い込んだ。アイナは態勢を整えると矢を放ったが、琥珀団の頑丈な鎧に跳ね返された。
直線を描くようなジャンプで接近され、容赦の無い力で首を掴んだ。
起き上がったタキトは鹵獲拳銃を構えた。彼はアイナを助けるために、相手を本気で撃とうとした。
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