赤富士

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 一時間近くかかって、目的地に到着した。近づいてわかったが、この換気口はセメントで固められていた。下からは一定の間隔で生温かく臭う風が流れてくる。更に、点検の階段が螺旋状に壁に彫りこまれている。換気口を塞ぐ格子は太い六角ボルトで固定されているが、モンキーレンチで外せた。これは全くの幸運で、琥珀団にとっては独自の物だったのかもしれない。  下は暗い。懐中電灯を向けても底は見えない。テレビで地下水路とか地下鉄の工事を観た時は何かのロマンを感じたが、これは闇をも吸い込む渦を思わせる。  マグナム銃とライトを持ったマイクを先頭に、タキト達は階段を降り始めた。懐中電灯をいくら向けてもぐるぐる回る階段と壁以外は何も見えない。  一段一段進むごとに眼は暗闇に慣れてきたが、階段が闇の中で延々と続いているのではないかという恐怖に包まれた。思い出したように上を見ると、入ってきた換気口は小さな存在になっていた。  すると、タキトの横を歩いていたトリトが皆を追い越して走りだした。慌てて追うが、あまり走らないうちに階段は終わった。ついに、地下施設に到着した。  地上へ風を送る立坑があれだけ大きいのだから、地下のダクトは完全に通路だ。分かりやすく言えば、四角いトンネルだ。しかし、照明が無いのでここでも懐中電灯を頼りに進む。路は左右に別れている。どっちに進むか迷ったが、トリトが何かに導かれるように右側を進んだ。  トリトは小さい体と小さい足に似合わずに進む。定期的に吹いてくる換気の風はしだいに熱を帯びてじんわりと汗ばんできた。臭いも気になってきた。薬品と焼けた金属が混ざったひどい臭いだ。  熱さと臭いに耐えて進んでいると、壁に薄い鉄板が水平に何枚も付いた通風孔のカバーを見つけた。そこから灯りが漏れている。彼らは板の間から覗いてみた。  灯りの正体は電球で、岩をセメントで塗り固めた部屋があった。  電球の下では鎧を着た琥珀団が何十人も動いている。自分達がいるダクトは宙に吊るされているのではなく、岩の内側を掘り進めた構造になっていたので気付かれる事なく歩いて来れた。ここでは金属加工をしているらしく、溶けた鉄が様々な型に流し込まれている。武器を作っているのだろう。更に行くと、何かの鉱物を精製している部屋に来た。マイクは火薬だと判断した。  次の部屋は首だけになった恐竜の剥製が多種展示されている。狩りの戦利品だろう。気色悪いその部屋を過ぎて、次の部屋の灯りの所に来た。  この部屋は・・・何だ?
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