赤富士

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 部屋の奥には巨大な水槽。青緑色の液体の中に白い塊が見えるが、何かはわからない。  それにしても、トリトはどこまで行くのだろう。さっきの水槽の部屋から離れ、また別の部屋の通風孔に着いた。そこでようやく足を止めた。同時に怒鳴り声が聞こえてきた。 「いつまでかかるんだ! とっくに予定の日を過ぎているぞ!」 「だから、何度も言ってるだろ。この世界の道具じゃ無理なんだ!」  今の声は・・・!?  タキトとマイクは顔を見合わせるとカバーの板の間から中を覗いた。  大きな台の上に様々な工具が並べられた部屋では二人の琥珀団がマントを羽織った背を向けている。彼らが対面しているのは、眼鏡をかけた男性。タキトの父だ!  その後ろにはカークの母とジェシカの父。服は汚れ、痩せている。父二人は無精ひげもひどい。どうやら、トリトはタキトと同じ匂いを持つ彼の父を悪臭の中から嗅ぎわけて導いてくれたようだ。  何を揉めているかわからないが、苛立った琥珀団は一組の男女を引っ張ってきた。今度はアイナが驚いた。自分の父と母だと言った。  琥珀団の一人がアイナの父を蹴り倒すと、鋼鉄の靴を頭に載せて圧力をかける。呻き声に琥珀団は笑うが、その笑いは背後からの突然の銃撃で消えた。  突然の襲撃に二人の琥珀団は扉を閉める事も忘れて逃げた。大人達は何が起こったかわからず呆然としていると、通風孔のカバーがバールで外されて落下した。  現れたのは、自分達の子供達。疲労困憊の顔に光が戻る。  タキト達は通風孔から飛び降りると、敵陣である事も構わず再会を喜ぶ。カークとジェシカは痩せた親を気遣うように抱き合う。アイナも父と母が抱いてれた。 「本当に来てくれるなんて思わなかった。ありがとう、タキト」 「うん。無事でよかったよ」  タキトも父親と硬く手を握る。手を離すと、アイナを呼んだ。 「父さん、この子はアイナ。一度会ったと思うんだけど」 「・・・ああ、君か。心配してたんだ」 「あの時はありがとうございます」  アイナは頭を下げてお礼をした。 「皆さんのおかげでタキト達と会えて、こうして助けに来る事が出来ました」  アイナの後に、彼女の両親も頭を下げた。 「申し訳ございませんでした。こんな事に巻き込んでしまって」 「本当にありがとうございます」  だが、感動の再会は終わる。部屋の外から足音が。
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