この世界の真実

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この世界の真実

「退屈しのぎに皆で持っていた本。あいつらはそれを見て、同じ物を造れと・・・」  助けに来た子供達は耳を疑った。支配を強める琥珀団に一層の脅威となる銃や爆弾、飛行船と地下鉄、歴史を無視した道具を使っていたのは、自分達の親が持ち込んだ本が元凶で、その親達が造って与えていたなんて。  古い言葉に〈ペンは剣より強し〉とある。暴力より知識が強いという意味だが、知識を蓄えた本が暴力の源になった。こんな皮肉があるだろうか? 「何て事してくれたんだよ、父さん!」  タキトは父親の胸倉を掴んだ。カークとジェシカも親へ蒼白の表情を浮かべる。 「すまない。仕方なかったんだ。言う通りにしないと、皆を殺すと脅されたんだ」  父親は震える低い声で言った。そうなると、気持ちは分かる。自分だって、アイナや仲間達を人質に脅されたらどうするだろうか?  正しいとも間違っているとも言えない。かといって、許される行為ではない。  タキトは一つの答えを出した。琥珀団が使う文明の利器を破壊する。この恐竜界に介入してしまった償いだ。誰からも反対の声はなかった。むしろ、当然だ。  カークの母は製造した武器を保管する倉庫に近い駅で列車を止めた。最寄りの駅を知っているのも、タキト達の親が武器の確認に何度か連れてこられたからだ。  ただ、足を負傷しているジェシカの父と列車の運転をするカークの母には余分にある銃を渡すとここに残ってもらい、他の者は武器庫に向かう。  武器庫へは案外何でもなく着いた。侵入者への警戒が無かったからか、南京錠と閂はあっても見張りはいない。マイクのマグナム銃で鍵を壊して扉を開けると、油と金属の臭いが鼻を刺激した。
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