合成恐竜・キメラサウルス

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合成恐竜・キメラサウルス

 白い体。あれは、もしかして地下施設の水槽で見たものか?  それは確かに恐竜だが、全く知らない姿だった。白い身体と言っても、死人のような冷たさを感じる色だ。その色を強調する様に骨と皮だけの痩せた姿だ。しかし、全身至る所が武器になっていると判断できる。  ゴツゴツした尻尾。太い爪を持つ二本の足。のこぎり状の背びれ。長い腕には皮膚が固化したコブ。上下の顎から湾曲した四本の牙が伸び、角は三つ又の槍のようになっている。  そして、目も真っ白だ。身体を伝う雨水で、一層の不気味さがある。 「どうだ。恐ろしいか!」  琥珀団だ。数十人の恐竜人間残党軍が地上に出てきた。 「これは我々が遺伝子合成して作り上げた恐竜だ!」 「全ての肉食恐竜の強さがこれ一つに入っている!」 「それも、体の遺伝子を急速進化させてあるんだ!」 「貴様らは戦いにもならずに敗れるんだ!」  琥珀団は興奮して笑った。あいつらは、そんな事までやっていたのか!  怒りに震えるタキト達を嘲笑うかのように、恐竜人間達は〈キメラサウルス〉に高揚した声で命じる。 「行け! あいつらを皆殺しにしろ!」  しかし、キメラサウルスは動かない。  不気味なほどゆっくりとした動作で足元の琥珀団を、じっと見る。 「この、バカ野郎! さっさと・・・!」  最後の言葉を言う前に、罵声を浴びせていた琥珀団はキメラサウルスの素早い動きで咥えられた。ティラノサウルスよりも大きな顎で、鎧を着た身体を噛み砕いた。  不気味な咀嚼の音の中に琥珀団の断末魔が赤い世界に響いたが、絶命で突然途絶えた。  しかし、鎧が邪魔してか、呑み見込まずに吹き上げる炎の中に吐き出した。 白い恐竜の口の周囲は真っ赤だ。
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