最終話・終わりと始まり

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最終話・終わりと始まり

 戦いが終わって数時間後。平原にジープとトラックが停車した。  車からマイクを始め、タキトの父、カークの母、ジェシカの父が降りた。彼らは四箇所にアンテナを立てた。元の世界に帰る時空転送の送受信機だ。元の世界の研究所の転送機がこちらの世界の電波を受信すればすぐに帰れる。  準備が整うと四方を光が囲み、タイマーが二十分のカウントを始める。  今いるこの世界の人はアイナだけ。恐竜も包帯を身体に巻いたトリトだけだ。本当はレジスタンス軍と感謝の宴に参加したかったが、帰るのを急ぐ事にした。  転送機は平地で人工物の影響を受けない場所を選んだので、アイナはトリトと一緒にそこに着くまでの同行を望んだが、それも終着となった。 一秒一秒と過ぎる時間の表示を見て、アイナはジープを降りた。トリトもそれに続く。  タキトは少し心が重くなった。だから、マイクは別れの挨拶をするようにと背中を押してくれた。ジープの助手席から降りると彼女に向き合う。 「アイナ、色々あったけど、本当にありがとう」 「うん。私の方も、ありがとう」  言葉を返した彼女は何故か下を向いたままだ。 「怖い事もあったけど、楽しかったわ。車に乗ったり、空を飛んだり、知らない物を飲んだり食べたり。色々な話も聞けた。あなたに会えて・・・良かった」  やっと、アイナは顔をあげた。眼には涙が浮いている。そして、頬を伝う。  アイナは涙を拭うこともせず、タキトの手を両手で握る。 「あげられる物は何もないけど、元の世界に帰っても、私の事を忘れないで。私もあなたを忘れないから」  アイナの握る手は、どこか力が入ってなかった。やがて、その手が離れる。  彼女とトリケラトプスの子は転送機の光の外に出る。アイナが、すごく遠くにいるように感じた。いや、元の世界に帰れば、もう会えないのだ。  元の世界の、二十一世紀に帰れば・・・。二十一世紀の日本に・・・。
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