驚きの世界へ

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 ふと、テーブルの上に置いたままになっているスープの鍋に眼がいった。柄を握ると、ラプトルに向けて大きく振った。効果は絶大で、熱いしぶきにラプトルは尻尾を巻いて逃げた。  ジープに着くと、ライフルを背中に回して、少女を持ち上げた。  直後、黒いマントをはためかせ、目元を出すスリットが走る鉄仮面と鋼鉄の鎧で全身を包む大男が迫ってきた。手には剣。振り下ろされた剣をかろうじて避けたが、少女を抱えていたので尻から転んでしまった。タキトは少女を自分の背後に廻すと相手の目を見た。  琥珀色の目をしている。琥珀色の目の剣士は剣をタキトに向けて構えたが、マイクがマグナム銃で剣を撃ち飛ばした。 「その武器は!?」  相手の声を初めて聞いた。男とわかるが、ザラザラした声だ。  手持ちの武器が無くなると共にこちらの武器を知った相手は、懐から金属製の笛を取り出した。それに息を吹き込んだ。 <<ピキイィィィィィィィン!>>  耳が痛くなる不気味な音が響くと、ラプトル達は興奮し、ギラギラした目に変貌した。 『カカカカカカッ』 『クオウッ! クオウッ!』 『ケアァァァァー』  怯えるタキト達を楽しむように吠えるラプトル。  自分達は銃を持っているが、撃てば一斉に飛び掛ってくる気配だ。転んだままのタキトも硬直した。すると、また笛の音が響いた。今度のは美しい音色で、自分の背後から聞こえる。  見ると、少女がオカリナを吹いていた。息を吹き込みながら、指で穴をリズミカルに調整して音色を変える。  ラプトル達に混乱が生じた。明らかに烏合の衆と化している。それだけでない。草原の彼方から新たな恐竜の集団が走ってきた。  背中に尖った板を連なるように生やした草食恐竜・ステゴザウルスだ。まるで壁を築くようにこちらに向かってくる。さすがのラプトルもあの数が相手では勝てないと判断したのか、次々と逃げ始めた。  金属の笛を鳴らしていた琥珀色の目の人物は逃げるラプトルに怒鳴ったが、置いてけぼりを喰ったので仕方なく逃げるしかなかった。  ステゴザウルスの到着と共に少女はオカリナから口を離して、静寂が戻った。
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