生きる代償

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生きる代償

 翌日、タキト達は袋一杯の灰をもらって、風の郷を出発した。この灰の役割はまた後に説明しよう。  自分達の親の行方を知るには『霧の都』のレジスタンス・赤の部隊なら何か情報があるかもしれないというのでそこに向かう。  今回のジープの運転はタキト。助手席にアイナ。マイクは後ろでこの世界の地図を見ている。ハンドルを握るタキトはアイナとオカリナの話をしている。 「へえ~。そのオカリナは人が作った物じゃないのか?」 「うん。基は恐竜の牙なの」 「牙?!」 「そう。それも全ての恐竜の長、竜神様の牙なの」  聞くと、この牙はアイナが生まれた時に竜神から贈られ、その牙が職人によってオカリナに加工されて、吹いていくうちに恐竜と自然と<会話>ができるようになったと教えてくれた。  その牙の主・竜神はどんな恐竜か訊こうとした時、森が終わって草原に出た。はるか向こうには鋭角な形の岩山が二つ並んでいる。マイクは地図を見ながら、あの山を目指すよう教えてくれた。  ドライブを楽しみながら、ようやく岩山の麓に来た。岩をよく見るとケーキのように色違いの層が形成されている。アイナが「岩を見てほしい」と言ったので車を止めて降りた。  一つの層を見ると、渦を巻いたアンモナイトの化石がびっしり。アンモナイトの層の下にはカブトカニ。怪物級の大きさの亀の甲羅もある。  更に下には花みたいな海草に混じって、不可思議な形の化石が。左右対称にいくつも生えたひれ、口元にあるJ型の触手。間違いなく、カンブリア期のアノマロカリスだ。生物の起源の時代の化石もあるとは。 「ここは海だったのか?」  タキトは観察に熱心だ。 「そう。私達は記憶の壁って呼んでいるわ」  記憶の壁。確かに太古からの生物の生誕記録が刻まれている。元の時代の研究者にはたまらない場所だろう。反対側を見るようにも言われたので向きを変える。  こちらの壁は魚類の化石が中心だ。下の層は奇怪な形だが、上に行くに従って自分達も知っている姿へと進化している。  ・・・ん? 何かすごい形相の魚の化石もある。顔がとにかく大きくて、巨大な牙が上下左右に四本ある。真面目に怖い。 「これは、ダンクレオステウスだね」  名前を言ったマイクの話ではサメの先祖とされ、頭部は確実な化石になるほどの頑丈な骨格だった。しかし、胴体は未だにわからず、復元の絵や模型は色々な形で表現されている。今、ここのはサメに似た背びれを持つ姿だ。
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