生きる代償

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 人間の臭いを感じたスピノサウルスは組み伏せていたティラノサウルスから視線を外すと、確実にタキトを見た。本来の目的はティラノサウルスの打倒ではなく、〈食べ物〉を見つける事だ。アイナがオカリナで止めるよう言葉を伝える。が、無駄だった。  闘いの興奮が醒めないスピノサウルスは、吠えてメッセージを跳ね返した。  つまり、自分達を襲うという事だ。二人は走った。獲物を追うスピノ。  河を走るタキトとアイナの靴が小さな水しぶきを立て、スピノサウルスの猛回転する脚が立てるしぶきは波のようだ。一歩の大きさが違うのでたちまち距離を縮められる。  必死に足を動かして逃げる二人に思わぬ助けが来た。ティラノがスピノの尾に噛み付いて動きを止めた。たぶん、アイナのオカリナの音を聞いて人間の存在を知ったのだろう。弱い恐竜や人間を相手にしないとは聞いていたが、本当に助けてくれるとは。  この間に逃げようと二人は足を進めたが、その先は滝になっていた。  格闘中のスピノサウルスは巨体を振ってティラノサウルスを引き倒した。そして、執念深くタキトとアイナに向かってきた。飛び降りるしかない!  二人は息を吸い込むと、同時に飛び降りた。  ギリギリの所で巨大な口が閉じられた。獲物を逃したスピノは眼下の滝つぼを悔しく睨む。その隙に、ティラノが首に深々と噛み付いた。  間を置かず動きが止まり、ティラノサウルスは『勲章』を軽々と引きずって姿を消した。  二人は無事に滝つぼを脱したが急流で自由が利かず、タキトが水面から突き出す岩に背中を激しくぶつけた。  アイナが急いで彼を掴んだが、浮くのがやっとで岸に近づけない。  と、体が急に浮かんで水から離れた。服の背中側を〈巨大な〉何かが引っ張り上げるような形で岸まで運んでくれた。  地に足をついたアイナは後ろを見た。そこには先程より何倍もある大きさで、南の海のような美しい青色の体のティラノサウルスがいた。
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