錬金の砦

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錬金の砦

 翌日。タキト達は朝早く出発した。トラックの荷台には石炭の大樽が三本。これは練金の砦に鉄道機材の製造を依頼する『お金』だ。  この世界でも貨幣は一応流通しているが、物々交換が主だ。別の形で聞いたが、この世界の人達は金やダイヤは知っていても、生活に<必要のない>存在なので価値が無い。そうなると、貴金属は利用はないのかと思われるが、魔除けの銀とか、一部の機械の腐食避けに金をメッキ用として採掘はされている。  霧の都の人達に手を振ってお別れをすると、一行は出発した。  これから行く練金の砦のレジスタンスは『青の騎士団』で構成されているとフェルは教えてくれた。  ところが、そこに行くまでに青の騎士団とは意外な形で合流できた。  甲羅干し中のアンキロサウルスがごろ寝している草原に車を停めて、マイクが携行缶で車に給油、ジェシカがアイナにCDウォークマンで音楽を聞かせたり、カークとフェルがキャッチボール、タキトが木の枝を投げてトリトと遊んでいると、一羽のプテラノドンが着地した。首には青い布を巻いている。  騎士団の〈伝書プテラ〉だとフェルは言う。  映画では決まって人間を連れ去るプテラノドンだが、実際はそんなに大きくないし、薄い膜の翼を見る限りそんな力は無いと思える。  アイナがオカリナで「どうしたの?」と伝えると、プテラノドンは背を向け、助走を付けると翼を羽ばたかせて飛び上がった。  タキト達は車に乗り込み、プテラノドンの後を追った。  やがて、人の背丈ほどの段差がある地形が見えてきた。低くなった地面の向こうに一頭の大型肉食恐竜が岩に向かって吠えている。岩の上では三十人くらいの人が身を寄せ合って怯えている。  助けなければ!  ジープとトラックは盛大にクラクションを鳴らした。岩の上の人達と肉食恐竜もこちらに気付く。その甲高い音に、アイナとフェルも飛び上がって驚いた。  この肉食恐竜はカナダに生息していた、アルバートサウルス。  元の世界でガイドをしていたマイクも探検の途中で化石を発見した事があると教えてくれた。  しかし、これから相手にするのは化石ではなく、生きた恐竜。よほど空腹なのか、自ら向かって来る獲物に目は笑い、喜びの咆哮をする。
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