囚われた竜神

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囚われた竜神

 鉱山一帯が明るくなると、強制労働を強いられていた人達は騎士団の医師や衛生兵に具合を診てもらい、琥珀団に操られたティラノサウルスも頭の傷の手当てを受けている。少し前に、伝書プテラの伝令を受けた霧の都の赤の部隊も到着したので、奪われた線路や貨車を回収して馬車に積んでいる。  一方、タキト達は琥珀団が宿営していた建物も調べた。ユーオプロケファルスの突進で半壊しているが、瓦礫の下には剣と槍。そして、銃が見つかった。  タキトが使っているのと同じ回転式拳銃が一丁と革袋に入った三十八口径弾。マシンガンは本体は無かったが、九ミリ口径の自動銃用の弾丸が詰め込まれた予備弾倉を十本手に入れた。この弾はカークのモーゼル大型拳銃にも使えるので、補充が出来たのは幸運だ。  せっかくなので、新たに見つけた拳銃はアイナに与えた。アイナは銃の重さを手に感じながら訊いてきた。タキト達の世界にはこのような武器=銃が沢山あるのか、と。  タキトは「そうだよ」と重たい口調で言った。 「オレ達が持って来た銃なんて、まだ弱い方だよ。海や山の向こうの国を空から攻撃するミサイルっていう兵器があるんだ」 「だから、世界中の軍隊が空で戦うジェット戦闘機や海で戦う戦艦を持ってるよ」 「イギリスが戦車を開発したのも、大体この時代よね」  二十一世紀の彼らは何でもなく言ったが、アイナには今言った兵器の名も形もわからない。だから、分るように説明するのは苦労した。裏を返せば、武器の発展がない、人と人の争いが無いこの恐竜界は平穏の証でもある。  それだけに「どうして、そんなに武器を造る必要があるのか?」とアイナは問う。  それはまるで自分達が叱られているような言葉だった。どう答えればいいのだろう?  考えた末、タキトは「世界中の人がお互いを信用してない」と言った。カーク、ジェシカ、マイクからも異議はなかったが、アイナから「同じ人間なのに?」と言われた。  確かにそうだ。どうして、自分達の、元の世界ではこんな事を繰り返しているのか。その答えは未だに見つかっていない。科学者のマイクは皮肉な口調で語る。 「同じ人間と思ってないからさ。核兵器だってあるよ」
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