赤富士

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赤富士

 この大陸のある場所に赤い山がある。人々は〈赤富士〉と呼ぶ。  ただし、この山は富士山ではない。この世界にも存在する青い富士山に似ているからその名が付いたのだ。赤い山の頂上からはうっすらと噴煙が昇っている。だから、噴火口の周囲は雪の代わりに火山灰に覆われている。その火山灰の影響で、太陽が隠れて薄暗い。  関東ローム層と同じ赤錆色の大地には草も木も水も無い。この何一つ生命を感じさせない大地に人の姿が。  活断層で出来た窪地に、タキトとアイナ、ジェシカ、カーク、マイク。そして、各国のレジスタンス軍が待機している。後ろには回復した竜神を始めとした恐竜達もいる。  やがて、首に青い布を巻いた騎士団のプテラノドンが降りて来た。片方の脚にはジェシカのデジカメが器用に握られている。プテラノドンは脚を上げてデジカメを返すと、持ち主のジェシカはとさかを撫でてあげた。  マイクはジープのボンネットに白い紙を広げると、ジェシカの操作するデジカメの動画を見ながら地図を作り始めた。地図といっても大雑把だが、琥珀団に戦いを挑むには大事な情報だ。  アイナの祖父が指摘したこの地こそ、琥珀団の現在の拠点だ。過去の琥珀団が燃料資源を使い果たしてでも熱源を手に入れた流れから、この地の地下に眠る火山の熱を利用して都市を築いていると予想したのだ。  その答えは吉と出た。映像には岩で隠した煙突らしい物が映っている。煙突の位置から地下施設を考えると五角形のようになっている。その五角形の一角からは、地形に隠すようにして伸びる一本の道。いくらカムフラージュしても長期に渡れば道が刻まれる。けど、正面から行くのは危険だ。幸い、目立つのを避ける為に見張りの琥珀団もラプトルもいない。これらが確認出来るも小型カメラと翼竜で空撮出来たからだ。  ふと、マイクはジェシカに映像を少し戻すよう頼んだ。  戻した映像には小山状に隆起した地面が真上から映っているが、その上面にボルトか何かで固定された円形の格子を見つけた。 「これって、換気口かな?」 「かもしれない」  タキトの指摘にマイクは答えた。そこで、当初の作戦を若干変えることにした。映像で見つけた換気口からタキト達が中に入り、自分達とアイナの親を救助し、中から混乱を起こす、と。
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