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「友情」
丸まった子猫たちに寄り添いながら、雫はトトが心配で常に耳を澄ましていた。
夜明けまで待てない。
そう、雫はキジにこの事を知らせに行こうと決心する。
キジは、ロキを慕う野良の中では、一番のまとめ役だ。
つまり、ロキの次に強いと言われている。何度もカラスやイタチを生け捕りにしてきたこともある、この辺りでは一番身体も大きい雄だ。
ロキはいつも、本気で殺り合えば、キジに勝てないと笑って言うが、キジはロキに喧嘩は仕掛けない。
単にボスの座に興味がない、なんて言っていたけれど、二匹の友情は、そんなことでは言い表せないような関係だと、いつもトトは言う。
どれくらい時間が経ったのか、雫は外へ顔を出し、空を見上げる。
耳を澄まして慌てて顔を背ける。
シュッと風が切れる音が頭上で響き、それを避けた雫は中へ戻る。
「...子猫だけの匂いを嗅ぎつけてきたんだな」奥の子猫を隅に追いやる。
重なり合った子猫を奥へ押し込むと、雫はねぐらの外を伺った。
黒い羽がバサバサと音を立てた。
「いつか殺ってやるつもりだったんだ。小さいからって舐めるなよ!」雫は子猫たちを守ろうと外に飛び出した。
「小さいから食うところが少しだな」ガラガラな声が耳障りだ。
相変わらず偉そうな態度に苛々が募った。
「こんな時に...」雫は続々と集まるカラスの集団に唸り声を上げる。
隠していた爪を出すと、頭上に嘴を向けられた瞬間飛び掛った。
「チッ、目を狙いやがったなこのチビ!」
片目をきつく瞑ったそいつは羽をバサりと広げた。
「飛び掛かれ!」合図のように一斉に襲ってくるカラスは大声で叫びながら雫を噛み始める。
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