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「おっと、そうだった。君は目的が何なのかを聞いていたね。そう、その目的だけど、」ゴクリと息を呑む。
さっきまでの危機的状況を考えると、雫は今頃奴らの餌になり、見るも無惨な姿になっていただろう。
少なからず、この紳士ぶっているカラスのお陰で助かったのだ。
どんな目的があったかを聞くのが、楽しみで仕方なかった。
そうしてプルは、全く声色を変えずにきっぱりと言った。
「私は生きているものを追い掛けて食べることに目的をもたないんだよ」
「...はぁ?」思わず声になる。
それは目的と言うより嗜好の問題だ。
「で、あたしを助けたと言うの?」
「答えはノーだ。」
言っている意味がわからず苛々し始めた雫は尻尾をバタバタと地面に叩きつける。
「つまり、君を助けたと言うより、私の趣味に合わないことが起こることを防いだまでのこと。」
「はぁ...ま、どっちでもいいけどさ。あたしは今から大事な用事があるんだよ。ここを離れなきゃならないけど、あいつら戻ってくるのか?」
結局、3丁目って何処だよ。そう、心でぼやきながら雫はプルを見た。
「心配は無用だよお嬢さん。今日人間がゴミを出していたのは本当のことだ。お腹がいっぱいになれば戻ってくることはない。ただ、奥の子猫たちの母親には忠告しておかないといけないよ。早目にここから引っ越すことをね」
雫は、確かにと頷いた。
そして、耳を澄ます。
急いでキジに知らせ、ロキとトトの元へ向かおうと、音を探る。
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