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「...ごめん。私のせいでこんなことになってしまって...」
「トトさんが悪いわけじゃないよ。何とかしてみんなで帰ろう!」雫はトトの頬に自分の頬を寄せた。
「って言ってもねぇ、」トトは中からどうにか出来ないかとガタガタと檻の入口から爪を引っ掛ける。
「おいロキ...あまり遠くに行かれると戻れなくなるぞ」キジは雫とトトに聞えないように言った。
「わかってる...」
遠くに行くと言うことは、縄張りを潜って戻らなければいけなくなる。下手をすれば、もっと遠くに追いやられることも考えられた。
ただどうすればこの檻から雫とトトを出せるのか、ロキには考えても答えが出せなかった。
「クソッ!今頃朝飯でも狩りに行ってたとこなのによ。全く人間てのは意味がわからねぇぜ!」
キジは荷台の上でジタバタと叫んだ。
「おい、キジ」
考え込むようにロキは言う。
「そういや、近頃ルルを見ねぇって話してただろ?」
その言葉にキジは表情を変えると、身体を起こした。
「ああ、そういやキュウも見なくなったって言ってたが...」
二匹は顔を見合わせ、トトと雫の入る檻を見て、もう一度顔を合わせた。
「どうするよボス。このまま乗ってくか?」
「キュウはいつもの放浪癖だろ?ただルルがいなくなったのは気になるな...」
「行こうぜロキ!」
キジとロキの話に、雫は目をキラキラさせた。
「何かワクワクするね!」
トトは諦めたように溜息を漏らした。
「とにかく、みんなで無事に帰ろうぜ」
キジの一言に皆が頷く。
「雫、トト」ロキは檻の前に立った。
「この鉄の塊が止まったら、俺とキジは一旦隠れる。人間が居なくなったら、必ずそこに行くから、少しだけ我慢してくれ。わかったな?」
「大丈夫。もし、ルルたちがいるなら、話を聞いておくよ」
4匹は顔を見合わせ大きく頷いた。
そうして止まった鉄の塊。
ロキとキジはすぐに車の下に潜り込んだ。抱えられた檻から目を合わせた4匹は、また後でと合図を送った。
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