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「...全く、ここはお世辞でもキレイだとは言えないね...」嫌悪感を剥き出しに、トトは目を閉じた。
暗い室内は、密接したように檻が重ねられ、所狭しと撒き散らかされたキャットフードが土と混ざり合い異様な臭いを放っていた。
トタンの壁は風が当たると耳障りな音を出し、トトは呆れたように息を吐く。
「ねぇトト、お世辞ってどういう意味?」
「んー、そうだね。例えば、キジってスマートでかっこいいね!とか。そういうのがお世辞ね」
太った大きな身体を頭に浮かべ、雫は大声で笑う。
「今度キジにお世辞言ってみるよ!」
「馬鹿だねぇ。そんなこと言ったらキジにドヤされるよ?」
「大丈夫だよ!ロキがいるもん!」
そうだったと、トトも笑った。
「ちょっと新入り。静かにしてよ!」
突然割って入ってきた声を辿ると、無数に並ぶ檻の中、向かって左側。ハチワレの青い目が光った。
「あぁ、ごめんよ。こんな辛気臭いとこに居たら、つい笑わなきゃやってられなくてさ。」
トトはスマートに言葉を返す。
「笑ってなんかいられないよ。あたしたちは、皆死ぬんだから...」
その言葉で怯えた子猫たちの声がざわざわと聞こえ始める。
「そんなことない!ロキとキジが必ず助けに来るんだから!」雫は大声で叫ぶ。
自分より小さな子猫たちを不安にさせたハチワレに腹が立った雫。
「...ロキとキジ?もしかしてトトと雫!?」
別の声がした。綺麗で澄んだ声。
真っ白で、ブルーとイエローのオッドアイ。
「ルル!?」
そう、雫はトトを見上げる。
「やっぱりここに居たんだね。怪我はない?ルル」
トトはなるべく落ち着きながら言葉にすると、周りを見渡した。
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