「友情」

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「ええ、大丈夫よ。だけど...トトと雫も捕まっちゃったのね。みんなと帰りたい...」 落胆した声色。 周りにはまた暗い空気が流れた。 周りを見渡していたトトは、その空気を打ち破るべく話題を変える。 「そう言えば、キュウはここにいないの?」 「キュウ?キュウは見てないわね…」 「そうか...やっぱりキュウはいつもの放浪癖なのかな...」 トトは独り言のように呟き考え込む。 「さっきも言ってたけど、放浪癖って何?」雫はキラキラな声を発しながら檻で弾む。 ふっと笑ったトトは、雫に視線を落とした。 「あのね、雄は大きくなると何処かへ放浪しちゃうのがいるのよ。」 「ふぅん。ロキやキジは何処にも行かないのに...」 「違うよ雫。ロキとキジも何処からか放浪して今のところに居るのよ?」 それを聞いた雫はなるほどと頷く。 「そんなことより...ここに仲間がいることがわかったから、後はここに集められた野良たちを落ち着かせないと...」 「どういう意味?」 「いい?ロキとキジが助けに来た時、この子達が騒ぐ可能性があるでしょ?そうなったら、人間にバレるかもしれないでしょ?」 ふむふむと雫は頷く。 「でも、この暗い空気をどう変えるの?」 雫は難しい顔でトトを眺めた。 「そうね...ちょっとみんな聞いて!」 トトは突然大声を出した。 「だから静かにしてって言ってるでしょ!?」ハチワレが威嚇したように唸った。 「あたしはトト。あんた名前は?」 暫く間があいた。何も答えないと思った瞬間、ハチワレは静かな声で言った。 「ハッコ...」 「ハッコは人間に飼われてたの?」 「どうしてわかったの?」檻にしがみついたような音が響いた。 「鈴だよ。あんた首輪がついてるじゃない。」よくわかったね、そう隣の雫が小声でトトに声を掛けた。 「で、ハッコも含めて聞いて欲しいの。あたしたちのボスと、最近ちょっと太り気味の...まぁ一応のナンバーツーが助けに来るんだけど、」 くすくすと笑うルルに、雫とトトは安堵の表情で見合う。 「みんなでここから脱出しよう。それには、みんなの協力が必要なのよ。」 静まり返った室内。トトは息を呑み、反応を待つ。 「でも...何をすればいいの?」 口火を切ったのはルルだった。 「誰か、あたしたちを連れてきたあの人間の1日の行動がわかる子いる?」 少しざわつく中、一番に声を発したのはハッコだった。 「...太陽が見える前には必ずここに来て、ご飯を置いて行くの。それから次に来るのはやっぱり次の日の太陽が見える前。だから1日に1度しかここには来ないの。...だけど、そのうち、2日間ここには来ない日があるわ...」 トトはその話を頷いて聞き、目を閉じ考える。 人間と居たハッコの言うことは間違いないと思った。 何故なら、元々猫は太陽の動きで大体の時間がわかる。 ただ人間のサイクルがわかるのは、人間に飼われている猫のほうが優れているのだ。 来ない時間は大体予想がつく。 「ねぇねぇ。トト」 不意に雫に呼ばれ視線を落とす。
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