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「俺と言えば体当たりだ」雫はがっかりしたように表情を崩した。
「えーそんなんでうまくいくの?」
「うまくいくかどうかはわからねぇけどそれしかねぇだろ?とにかく手当り次第体当たりだ!」キジは得意げに腕をならす。
それまで静まり返っていた他の檻に入れられた猫達がざわつき始めた。
口々に怖いと聞こえ、ロキが呆れたようにキジの背後に立った。
「怖がらせてどうすんだ...」
「...っなこと言っても、他にこの檻を開ける方法あんのか?」
キジの言う通り、ここで名案を出せる者などいなかった。
「帰りたいだけなのに...」
ハッコは震えた声を漏らし、子猫達は小さく震えていた。
「ロキ...みんなを助けてあげたいよ...」
ロキは、悔しそうに爪を出すと、地面の土を掴む。成す術を失った猫達から、悲しみの声が溢れ、諦めの言葉が誰かからいつ飛び出してもおかしくないと思われた時だった。
室内に一際大きな音が響いた。
トタンの壁を叩く音。
ロキとキジは慌てて重なり合う檻の隙間に身を寄せ、雫はトトの背に隠れた。
皆が息を呑む中、その音は次第に激しくなり、錆びて腐ったトタンの一部が破られる。
薄暗い室内で、開かれた外への通路は、夜の色でよく見えない。
目があまり良くない猫達は、ただ息を潜め音を探る。
潜り込んだ黒い物体はバサりと音を鳴らした。
「カラスだ!」誰かの叫ぶ声で、ロキは舌打ちする。
「カラスだとー?!俺様が生け捕りにしてくれる!」キジは爪を立て牙を剥き出した。それを交わしバサバサと室内を飛び回り、キョロキョロとする雫とトトの檻の上に止まったカラス。
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