「決行」

4/9
前へ
/64ページ
次へ
「そうか...そんなことがあったのか。」ロキは話を聞き、安心したように呟く。 トトは言葉を発さなかったが、子供たちを思い出し、少し悲しげに笑った。 「よし...、」喧嘩するキジとプルのところでロキは声を上げた。 「プルと言ったな。俺はロキだ。」 プルは静かに側の檻に留まる。 「ああ。勿論知っているよ。あの辺では有名人、いや、有名猫だからね。我々の仲間たちも、君がいると子猫に迂闊に手を出せないとぼやいていたよ。私としては非常に有難いことなのだが...」 「俺達には今、急いでやらなきゃいけないことがある。雫から話は聞いた。どうやらおまえは悪い奴じゃなさそうだ。だが、ここにいる猫達は皆、カラスの存在に気が散って仕方ねぇ…悪いが、出ててもらえないか?」ロキの言葉に目で頷くプル。 「...わかった。今の話は理解したよ。ただ...」 ロキの提案に、プルが向き合って言葉を返した。 「今、ここで何が起きてるのかくらいは聞かせてくれないだろうか?私は雫に用があって来ただけじゃなくて、先程も言った通り、胸騒ぎがして雫を捜しにきたのだから」 一瞬、その場に沈黙が流れた。 ロキはじっとプルと見合ったままいたが、暫くすると根負けしたように小さく笑みを漏らした。 そして、事の経緯をプルに語る。 「なるほど。要するに悪い人間が君たちを連れ去ったと言うことだね。実に興味深い。私はあまり好き嫌いがないのだが、どうも人間だけは嫌いなものでね。ぜひ君たちに協力しよう」 「...ん?おまえ、さっきうちのボスが出てろって話をしたのを忘れたのか?!」 キジは痺れを切らせ言い放つ。 「それなら聞くが、君たちはこの檻をどうやって開けるつもりなんだい?」 「そりゃ...あれだ...。体当たりに決まってんだろ?」 キジの言葉にプルは大声で笑い始めた。 「それは不可能だよ太っちょくん。」 「ふっ!太っちょって何だ!?やっぱりおまえ生け捕りにして食ってやる!!」 暴れるキジをロキが制する。 「いいかい?この数の檻を開けるために体当たりなんかしてたら、何日かかるか...しかもいくら君の身体が丈夫でも、さすがにボロボロになるだろうね…」 「ねぇプル!」 雫は檻に顔を押し付けた。 「それならプルは開けられるの?」 雫は期待に胸を踊らせ核心に迫る。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加