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「そうか...そんなことがあったのか。」ロキは話を聞き、安心したように呟く。
トトは言葉を発さなかったが、子供たちを思い出し、少し悲しげに笑った。
「よし...、」喧嘩するキジとプルのところでロキは声を上げた。
「プルと言ったな。俺はロキだ。」
プルは静かに側の檻に留まる。
「ああ。勿論知っているよ。あの辺では有名人、いや、有名猫だからね。我々の仲間たちも、君がいると子猫に迂闊に手を出せないとぼやいていたよ。私としては非常に有難いことなのだが...」
「俺達には今、急いでやらなきゃいけないことがある。雫から話は聞いた。どうやらおまえは悪い奴じゃなさそうだ。だが、ここにいる猫達は皆、カラスの存在に気が散って仕方ねぇ…悪いが、出ててもらえないか?」ロキの言葉に目で頷くプル。
「...わかった。今の話は理解したよ。ただ...」
ロキの提案に、プルが向き合って言葉を返した。
「今、ここで何が起きてるのかくらいは聞かせてくれないだろうか?私は雫に用があって来ただけじゃなくて、先程も言った通り、胸騒ぎがして雫を捜しにきたのだから」
一瞬、その場に沈黙が流れた。
ロキはじっとプルと見合ったままいたが、暫くすると根負けしたように小さく笑みを漏らした。
そして、事の経緯をプルに語る。
「なるほど。要するに悪い人間が君たちを連れ去ったと言うことだね。実に興味深い。私はあまり好き嫌いがないのだが、どうも人間だけは嫌いなものでね。ぜひ君たちに協力しよう」
「...ん?おまえ、さっきうちのボスが出てろって話をしたのを忘れたのか?!」
キジは痺れを切らせ言い放つ。
「それなら聞くが、君たちはこの檻をどうやって開けるつもりなんだい?」
「そりゃ...あれだ...。体当たりに決まってんだろ?」
キジの言葉にプルは大声で笑い始めた。
「それは不可能だよ太っちょくん。」
「ふっ!太っちょって何だ!?やっぱりおまえ生け捕りにして食ってやる!!」
暴れるキジをロキが制する。
「いいかい?この数の檻を開けるために体当たりなんかしてたら、何日かかるか...しかもいくら君の身体が丈夫でも、さすがにボロボロになるだろうね…」
「ねぇプル!」
雫は檻に顔を押し付けた。
「それならプルは開けられるの?」
雫は期待に胸を踊らせ核心に迫る。
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