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「しばらくしたらトトさん、子猫たちを連れて引っ越すでしょ?大丈夫かな...」
独り言のように呟く雫。
雌猫は、子供を産んだ後、暫くすると安全な場所を求め、そこに子猫を一匹ずつ運ぶ。
その時、カラスやイタチに子猫が狙われることはよくあることだが、この辺りでは、ロキがいるため奴等もあまり目立った動きは出来ない。ただ、トトは別だ。
それと言うのも、何故かトトだけはロキに守られることをとても嫌がっていた。
周りの野良たちはロキを頼っているのに、トトはロキを嫌っているようだった。
雫はずっと気になっていたものの、その訳を聞けずにいた。
考え込む雫に飛び付いたロキがじゃれ合うように甘噛みする。
「やめろよロキ!」
「おまえだってまだ子猫だろ。余所の子猫を心配するぐらいなら、自分の身を案ずるんだな」
舌なめずりしたロキは、カラスを睨みつけた。
「そろそろ日が暮れる。奴等も帰ってくだろ...夕飯でも狩りに行くか、」
ロキは路地裏を歩き始めた。
夕焼けに、ロキの歩く影が映る。
雫はその後ろ姿を追いながら、トトのことを心配していた。
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