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結局何も聞けないまま、雫は諦めたようにロキについて行く。
草がお生い茂る土手から、夕日が沈もうとしていた。
「いいか雫...」
ロキは身体を地面に押し付け、小さく言葉にする。
「獲物を狙う時は、こうやって背を低く...背後を捉える...俺達の強みはこの耳だ。音を捉え、一気に行く...」
チャンスは一度だけ。そう、付け加える。
雫は言われるまま身体を低くして頷いた。
「間合いをとって、一気に爪を出す!」
その言葉通り、ロキは宙に舞うように飛び掛った。
捕えられた野鳥は、羽をばたつかせるも、首に突き刺さるロキの牙が更に喰い込んだのか、動きが徐々に遅くなっていく。
ばさりと目の前に獲物が置かれた。
「雫、やってみろ」
ロキに言われた通り、雫は次の獲物を狙う。
背を屈め、一歩進み、息を潜める。
周りの音が遮断された瞬間、雫はその音だけを捉えた。飛び掛り一気に爪を立てる。
「やったぁ!」
手応えを感じ、嬉しさから思わず手が緩む。
「あ...」飛び去って行くその獲物を呆然と眺めた。
「...最後まで気を抜くなといつも言ってるだろ」その言葉で我に返る。
ロキは笑って雫に近付くと、言葉を繋げた。
「雫には狩りよりも餌を取れる方法があるぞ?」雫は言葉の意味がわからず首を傾げた。
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