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路地裏から脇道に逸れると、渇いた用水路を潜る。
静かな空き地で雫は周辺を見渡した。
此処は宝の山だ。
そう、咥えたビニール袋を置くと、ごそごそと頭を突っ込んだ。
そこは、人間が捨てたであろうゴミの山があり、明るいうちに来た時に見つけていた人間の洋服を引っ張り出した。
トトは子猫を壊れたソファの中に隠している。雫はもう一度ビニール袋を咥えると、ソファに近付いた。
「誰だ!!」トトの尖った声に一瞬びくりと身体が強ばるも、すっと顔を覗かせた。
「何だ、雫じゃないの」
穏やかな顔のトトに安心した雫は、中へと入った。
「トトさん、お土産があるんだ」
得意げに差し出した物を見て、トトは嬉しそうに袋に顔を突っ込んだ。
「雫ありがとう」
そうお礼を告げながら、トトはカリカリと音を立てご飯を頬張った。
「近頃、イタチにここを嗅ぎつけられてね、この子たちを置いて外に出れなくなってしまったんだ」
そう言うと、またカリカリといい音を鳴らす。
雫は、子猫を覗き込むと、溢れんばかりの笑顔で子猫の渦に鼻を突っ込んだ。
「か、可愛い...」小さく鳴く声に胸を踊らせ、隣に座ってじっと見つめた。
「雫もお姉さんだね。」ぺろりと舌舐めずりしたトトは戻って来ると、子猫たちの間で横になる。
お乳を探す子猫たちは、お腹いっぱいのトトに夢中でしがみついていた。
「あ!そうだ!トトさんもう一つあるんだった」雫は思い出したように外に出ると、洋服を咥えて戻った。
「今日は風が冷たいから、これも持って来たんだ」雫はそれをトトのところに引き摺り運ぶと、子猫の上に掛けた。
「春だと言うのに、まだ夜は冷えるからね。ありがとう」雫は嬉しそうに何度も頷いた。
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