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「雨に打たれていたから雫?適当につけたなあいつ...」身体を温めながら、トトは笑った。
「おまえ、捨てられたのか?母猫に?それとも人間に?」その時、小さな雫を見ていて思った。ほんとうに可愛い子だと。
「大きくなったね、雫」
眠る雫を見て、可愛くて賢い子に育ったのはロキが傍に居たからかと、少し諦めに似たような溜息を吐いた。
「...トトさん?」まだ朝も来ない静かな深夜。物音が微かに聞こえ、雫は目を覚ます。
傍にいる子猫に安堵した。
身体を起こすと、トトが出口から顔を外に出す後ろ姿が見えた。
「トトさん」雫はもう一度名前を呼ぶ。
振り返り戻ったトトは鋭い眼差しで雫に駆け寄った。
「何か...嫌な予感がする。雫も耳を澄ましてごらん」遠くで唸り声が聴こえる。
「ロキ!!」振り返ると、トトは頷いた。
「...誰かがロキに喧嘩を吹っ掛けてるのかと思ったけど、ちょっと違う気がする。」
「あたし、ロキのところに行ってくる!」
雫はねぐらを飛び出そうとした。
瞬間首根っこを捕まえられる。
「おまえは此処にいな。あたしが行くよ。」
この時間は天敵達が活発な時間。
雫をひとりにするのは心配だった。
かと言って、子猫たちを置いて行くわけにもいかない。
「いいかい雫。この子達を頼むよ。もしも夜明けが来ても戻らなかったら、この事をキジに知らせてくれ。此処を出る時、入口を隠して出るんだよ、わかった?」
雫は大きく頷いた。
トトの勢いに、自分が行くとは言えなかった。
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