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「野良」
国道脇から少し逸れると、いつもの畑と、木造の小さな小屋。
その真裏には、蓮華草が一面に咲いていた。
古くなった小屋の壁は、一部木枠が歪み、中が見えていた。
おばあさんはお昼休憩で、小さなテレビを前にお茶を啜る。
冒険を終えた猫達は、いつもの日常を過ごし、キジは横になり、ウトウトし始めていた。
「キジーキジー!!」
遠くから聞こえた声に耳をピクリと立てる。
片目で様子を伺うも、起き上がるのが面倒で、寝た振りをした。
「もう!キジってば!」不機嫌にキジのお腹の上に飛び乗った雫。
「またおまえはデカイ声で...」
「ねぇキジ!遊ぼう!」
「あぁ?ロキに遊んでもらえ...俺は無性に眠いんだよ...」唸った雫が拗ねたようにキジの周りで草を捕まえ転がった。
「ロキは今日ハルと、トトさんところの子たちに狩りを教えに行っちゃったの!つまんない...」
わしゃわしゃと草を噛みながらぼやく雫をよそに、キジは小屋の隙間から見えるテレビに釘付けだった。
『見て下さい!この劣悪な環境で猫達は檻に入れられていました。男は供述によると...』テレビから聞こえる緊迫したような人間の言葉。
「おい雫...見てみろよあれ...」
雫はバラバラになった草を頭を振って払うと、小屋を覗く。
『野良猫以外にも飼い猫も連れ去ったと供述しています。』
雫とキジは顔を見合わせた。
「やっぱり悪い奴だったんだね...あの人間...」
「だな...って言っても、最初からいい奴には見えなかったけどな...」同意したキジはごろんと背を向け寝入る。
「あ!!」叫ぶ雫に嫌悪感を抱きながら振り向いたキジ。
「だからデカイ声を出すなよ...ばあちゃんに気付かれたらどうすんだ?」
「だってあれ...プルがいるんだもん!」
画面に向かってそう言った雫。
キジは冗談だろと呟きながら身体を起こした。
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