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『次回の学力テストで、学年順位100位ジャストを取る』
それこそが、酒井律美‥‥すなわち私自身に課した密かなミッションなの。
何故そんなことに拘るかというと‥‥ぶっちゃけ(割りと)イケメンな『幼馴染』である大塚兵吾のせいなのよ。
兵吾のヤツったら、最近は何かこう‥‥気になり過ぎて逆に憎たらしく思えて仕方ないわ。
そもそもの話。
同学年221名で、私の学年順位は10~20位辺り‥‥そう、普通ならば。
正直な話、『この上』を目指すのは諦めているの。
何故なら『此処から上』には天性の頭脳怪物か、もしくは過労死ならぬ過勉死しそうなくらいの努力家が魑魅魍魎の如く居座っているからね。ハッキリ言って世界が違い過ぎて着いていけないのよ。
さて。
それはつい先日の事だったわ。
憎き兵吾が友達と喋っているのを横で耳にしてたの。
最初は○○アニメの2期がどうとか、ツマンナイ話だったみたいだけど。
何処からか『女の子の好みについて』みたいな話になったみたいで。
‥‥つーかさ。アンタ達(兵吾を除く)、女の子の好みなんて言える立場だと思ってんの? そんな『選べる』ほど自分の事をイケメンだとでも? その月面クレータみたいなボコボコの顔面で? トイレに行って鏡でも見てきたらどうかしら。
あーあ、なんで兵吾があんなのとツルんでるかしらねぇ。
全く、イヤんなっちゃう。
ああ言う妖怪が近くに居ると、バリヤー張られたみたいで近づけないじゃない。もっとイケメンのグループとツルめばいいのに。まったく、腹が立つったらありゃしないわ。
そんで、分不相応な話の中で『妖怪子泣き爺(私認定)』が兵吾に聞いたのよ。
「で、お前はどんな女の子が好みなの?」って。
おっけー、ナイス質問!
そこだけは評価してあげるわ。そこはチェックしないとね。もうね、それで羽ばたけるんじゃないかって言うくらいに耳を大きくして聞いてたわ。
そしたら。
「オレさぁ、頭わるいからよ。学年順位があまり高いコは苦手かな」
‥‥って言いやがったのよ!
ええええっ! 何それぇぇぇ! もしかして私はOUTなのぉ?
私が心の中で愕然としていると、妖怪仲間が不思議そうな顔で言ったわ。
「変わってんなぁ、お前。漫画とかなら『学年トップの才女に惚れこまれる』ってのが王道のパターンだぞ?」って。
そしたら兵吾が言うには。
「いやぁ、現実的にはレベルが違うと話が噛み合わないし。だとするとツマンナイもんだぜ? まぁ、今のオレなら『学年順位2ケタ』とかは無理かなぁ」
私、10~20位‥‥思いっきり『2ケタ』‥‥オワタよ。
もうね、その日の午後の授業なんて全然耳に入らなくって。家に帰ってからノートみたら、泥酔したミミズが暴れまわっているみたいな判読不明な字が書いてあるし。
もしかしたら私の前世は、平安時代の書家か歌人だったかも知れないわね。この『達筆』具合はさ。
しかし。
私は時間が経って少し冷えた頭で考え直したの。
『私はまだ2年生だ』って。
これが3年だったら進路に影響するからヘタな真似は出来ないけど、次回の学年末テストなら、まだ『馬鹿』をやっても許されるハズ!
兵吾のアホが『2ケタはダメ』って言うんなら、『3ケタ』になってやろうじゃないの!
‥‥けど、あんまり低く過ぎるのも問題だわね。
親とか周囲の眼もあるけれど、何より私のプライドが傷つくのよ。
どうするか‥‥
迷った挙げ句に私が出した結論が。
『100位ジャストを目指す』事なの。ギリギリ3ケタね!
それ以下もイヤだし、それ以上は絶対にダメ。どうしても『100位』になる!
それが、私に課したミッションなのよ!
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