俺の嫌いなアイツ

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「きた健人!フゥ~!」 俺が前に出てすぐに、牧野が冷やかす。 「やめろやめろ」 俺はそう嫌がるふりをしたが、実は前もって牧野に、俺が前に出たら盛り上げてくれるように頼んでおいた。 この新しいクラス、正直言って本当に牧野以外友達がいなかった。 1年の頃に同じクラスだった奴は何人かいるけど、学校生活のほとんどをサッカー部で固まって過ごしていたので、親しい友達はほとんどいなかったからだ。 少し緊張しながらも、俺は自己紹介を始めた。 「長崎健人です。サッカー部に入っています。好きな歌手はGReeeeNです。よろしくお願いします」 俺の自己紹介も、他のクラスメイトと同様短くてシンプルだ。 「健人、それだけー?他に言うことないー?!」 「ねえよ!」 牧野の二度目の冷やかしに、クラス中に軽い笑いが起きる。 チラッと高橋の方をみると、彼女も笑っていたが、どうやら後ろの席の竹本とのお喋りで笑っているようで、俺の自己紹介なんてあまり聞いていない様子だった。 なんかむかつく奴だ。 それから俺もお決まりの拍手をもらって、席に戻った。 その日は、隣の席の高橋とは一言も会話することなく放課後を迎え、俺は部活へ行った。
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