俺の嫌いなアイツ

11/52
前へ
/52ページ
次へ
その次の日、俺は初めて高橋と話した。 彼女は新学期早々、遅刻だった。 1時間目の最中にガラガラっと教室の扉が開き、高橋が入ってきた。 寝不足なのか眠そうにあくびをする高橋に、クラス中が注目する。 「高橋さん、いきなり遅刻ですか?」 「すみませ~ん。寝坊しちゃって」 「もう2年生なんだから、頑張りなさいよ」 「はぁい。ふふ」 英語のおっさん先生に皆の前で突っ込まれていたが軽く流して、高橋は俺の隣の席に座った。 ふふ、と笑ったのは謎だ。 俺の隣の席に座った高橋は、教科書を開いたが何ページか分からないので後ろの竹本に聞こうとしたが、竹本は絶賛居眠り中だった。 そして、仕方なく小声で俺に聞いてきた。 「ねぇねぇ、何ページ?」 「46」 「ありがとっ」 これが初めての会話だった。 高橋は俺が教えたページを開いた後、カバンの中をごそごそしてからまた小声で俺に話しかけてきた。 というか、小声風だった。 「あのー、シャーペン貸してもらっていいですか。ふでばこ忘れた」 「あ、はい」 もともと声量が大きいせいか、本人は小声で話しているつもりだろうけど、授業中だし静かだからクラス中に聞こえる声だった。 俺はシャーペン1本と消しゴムを渡した。 「ありがと!消しゴムもいいの?2つあるの?」 「うん」 「さんきゅ~!」 あまりにも皆に聞こえる声だったので、先生が高橋の方を睨んだ。 「高橋さん?いいですか?」 「はい!すみません」 高橋はニコっと軽く笑って教科書をめくるふりをした。 これが、俺と高橋の初めてのやりとりだった。 やりとりってほどのものじゃないけど。 というか、俺は割と真面目な性格だから、平気で遅刻してきて当たり前にふでばこも忘れる高橋に、少し嫌悪感を覚えた。 あと、無駄に愛想がいいところもなんかむかついた。 こいつは今まで、なんでも笑ったら許されると思って生きてきたな、と。 まあ、どうでもいいんだけど。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加