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その次の日、俺は初めて高橋と話した。
彼女は新学期早々、遅刻だった。
1時間目の最中にガラガラっと教室の扉が開き、高橋が入ってきた。
寝不足なのか眠そうにあくびをする高橋に、クラス中が注目する。
「高橋さん、いきなり遅刻ですか?」
「すみませ~ん。寝坊しちゃって」
「もう2年生なんだから、頑張りなさいよ」
「はぁい。ふふ」
英語のおっさん先生に皆の前で突っ込まれていたが軽く流して、高橋は俺の隣の席に座った。
ふふ、と笑ったのは謎だ。
俺の隣の席に座った高橋は、教科書を開いたが何ページか分からないので後ろの竹本に聞こうとしたが、竹本は絶賛居眠り中だった。
そして、仕方なく小声で俺に聞いてきた。
「ねぇねぇ、何ページ?」
「46」
「ありがとっ」
これが初めての会話だった。
高橋は俺が教えたページを開いた後、カバンの中をごそごそしてからまた小声で俺に話しかけてきた。
というか、小声風だった。
「あのー、シャーペン貸してもらっていいですか。ふでばこ忘れた」
「あ、はい」
もともと声量が大きいせいか、本人は小声で話しているつもりだろうけど、授業中だし静かだからクラス中に聞こえる声だった。
俺はシャーペン1本と消しゴムを渡した。
「ありがと!消しゴムもいいの?2つあるの?」
「うん」
「さんきゅ~!」
あまりにも皆に聞こえる声だったので、先生が高橋の方を睨んだ。
「高橋さん?いいですか?」
「はい!すみません」
高橋はニコっと軽く笑って教科書をめくるふりをした。
これが、俺と高橋の初めてのやりとりだった。
やりとりってほどのものじゃないけど。
というか、俺は割と真面目な性格だから、平気で遅刻してきて当たり前にふでばこも忘れる高橋に、少し嫌悪感を覚えた。
あと、無駄に愛想がいいところもなんかむかついた。
こいつは今まで、なんでも笑ったら許されると思って生きてきたな、と。
まあ、どうでもいいんだけど。
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