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どのくらい時間が経ったか。
暫くぼーっと頭上の小さな星々を眺めていた。
ふと我に返ると
何か音楽のようなものが聞えていることに気付いた。
遥翔「……太鼓?」
それは陽気な笛の音や
跳ねるように軽快な太鼓の音のようだった。
誘われるように音のする方へ行く。
辿り着いた先は神社だった。
《宵神明神》(よいがみみょうじん)
鳥居の中央、古びた石にギリギリ読める字で彫られていた。
鳥居の先、幅の広い参道には
灯りをともした屋台が数多く並んでいる。
今日は祭りの日だった。
遥翔「この神社……」
この神社には小さい頃、よく遊びに来ていた。
広い境内にある拝殿の裏に森がある。
その森は山に続いているため広く
大人でも迷ってしまうような場所だ。
ただ、拝殿から真っすぐ奥に進んだ森の中央
そこには小さな社が建っていて
社の横にある小川の水がきれいで美しかった。
そこでよく、“よっちゃん”という子と二人で遊んだのを思い出した。
ただ、森には入ってはいけないと親や地域の大人、学校の教師たちからも言われているその場所で俺たちはいつも遊んでいた。
なんで入ってはいけないかという理由に関しては
神隠しに合う、神様に連れていかれちゃう、迷ったら出られなくなる
その森はあの世につながっている
とかなんとか、子どもを怖がらせるために大人たちが言っていた。
実際の所、別にこの森では行方不明事件などは起きていない。
現に自分が無事に生きているのがその証拠だった。
そんな昔の事を思い出しながら
参道の屋台を鳥居の外から眺めた。
遥翔「そっか……今日祭りの日だっけか…」
毎年、六月六日に祭りをやっていたことをすっかり忘れていた。
誘う人もいなければ行く気力もなかった。
境内から焼き鳥やたこ焼き、わたあめの良い香りが夏の風に乗って遥翔の鼻に届く。
遥翔「……腹減ったし何か買ってこ」
リュックの中から財布を出し、現金を確認すると
鳥居の中へ足を一歩踏み出した。
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