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今思えば、先輩は
「変わっていくクラスに合わせて、自分も変わっていく。そうすればみんなからは無理でも、誰かから頼りにされるヒーローになれる」
そんなことが言いたかったんだと思う。
先輩自身も児童会活動や僕みたいな下級生を助けて、自分の居場所を作るために必死に頑張っていたのだろう。憧れの先輩は僕には見えないところで人知れず努力をしていたんだ。
これは今思い出して初めて気づいたことで、この時の僕には何もしなくても誰かからは頼られる。そんな未来が約束されたと思い込んでいた。
綾野先輩は大人だった。でも今から思えばただの子供だったのかもしれない。勘のいい子供。対して僕は今でも愚かな子供のままだ。
☆☆☆
5時のチャイムが鳴って僕は先輩の家を後にする。まだ日の明るい玄関で
「ソウくん、また遊ぼうね」
と頬に笑窪を作って先輩は笑った。
「うん、バイバイ綾野先輩」
僕は手を振った。先輩への淡い恋心も、自分自身の身長が伸びて強いヒーローになれることも、時がたてば自然に叶う気がしていた。でもそれは永遠に叶うことはなかった。
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