中学時代のヒーロー

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 もし僕がここまで負けず嫌いではなく、ヒーローにも憧れていなかったら、落ちこぼれキャラとして生きる選択肢もあっただろう。  でも恋心とともに抱いていたヒーローとしての綾野先輩への憧れと、夏休みの日に先輩から言われた一言が僕にそれを許すまいとずっと拒み続けていたのだった。こんな惨めな姿、綾野先輩には見せられない。  幸い先輩は中学受験をし、都内にある名門の中高一貫校へと進学していった。小学校の卒業式を最後にもう先輩とは連絡をとることさえしなかった――。 ☆☆☆  中学時代のヒーローはちょっとやんちゃで義理堅い。そんなイメージがある。僕と正反対だった。  この頃の僕はもうみんなにとってのヒーローのなることは諦め、誰かにとってのヒーローになることを目指していた。それでも結局僕はまわりに助けられてばっかりだった。  中学一年の時、仲良くなった小林星士(こばやしせいし)という男子生徒がいる。小林は他の小学校出身で、坊主頭にニキビがトレードマークだった。初めて出会ったとき、僕は彼との身長差に驚いた。身長が一回り大きい。僕の頭が小林の胸あたりだ。  小林は一年生ながら野球部のエースで、僕の描く中学時代のヒーローそのものだった。そんな正反対の存在だった僕らはたまたまクラスの席が近かったことで仲良くなった。
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