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「申し訳ありませんが、砂時計に関する質問は何ひとつお答えできません。私たちは時間停止能力を得た人間が何をするのか、ある種の思考実験のようなことを現実に行っているだけです。もちろんあなたのプライバシーは完全に保護されています」
思考実験を実際に行う? 実験を行うとして、なぜ僕が選ばれたんだ? 疑問は沸々とわいてきたが質問がまとまる前にヨスガが続けた。
「あとその砂時計ですが、世界に一つしかないのでご安心ください。他の能力者によって勝手に時間を止められたり、能力者同士のバトルが始まるといった漫画みたいなことも起きません。時間が止まった世界で自由に動けるのはあなたと私だけです。ただし私は時間を操れませんが」
理解はしたが納得はいかなかった。僕は実験体で、時間停止中はヨスガに観察されている。
「実験期間は一か月半です。ですからちょうど夏休みが終わるまで。実験が終われば砂時計を返していただきます」
「その実験が終われば僕はどうなる?」
「砂時計に関する記憶だけを一切消して、今まで通りの生活に戻ります。ただ能力を使って変えた事実は戻りません。殺した人間は蘇りませんし、盗んだお金もあなたのものです」
「そういうことか」
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