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ゲームをやめて二人だけの時間が来た。落ちてきた太陽が楽しい一日の終わりを告げていた。
僕はこの時、綾野先輩に3つの思いを打ち明けることを決めた。一つは初めて出会ったときに助けてもらったことへの感謝。二つ目は先輩に頼らず強く生きていく決意。そして三つめは淡い恋心だった。
僕が一つ目のありがとうを伝えると綾野先輩は黙って頷いてくれた。
「オレ、強くなりたい。誰からも頼られる強い大人になりたい」
弱かった僕の大きな目標だった。それは決して強がりなんかではない。
「もし先輩が困ったら今度はオレが助ける」
それを聞いて綾野先輩は笑った。
「ありがとうソウくん。今日のソウくんは私のヒーローだよ」
冗談交じりではあったが、今でも僕の胸を貫き続けている一言だった。あまりの衝撃にしばらく沈黙がおりる。
「……でもソウくんは今でも十分強い子だよ、だって泣いてるところを見たことがないんだもん」
沈黙を遮って綾野先輩が言った。強がっていた僕は涙を見せまいと必死にこらえることが多かった。でもこの時ばかりは嬉し涙が出そうになった。この人は本当に僕を認めてくれる。そう思った。
「オレ、先輩と離れたくない」
口から弱音めいたものが自然と出てしまった。
「え?」
と思わず先輩が聞き返す。
「……だって来年には先輩、卒業しちゃうんでしょ?」
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