中学時代のヒーロー

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中学時代のヒーロー

 5年生になって、6年生になって、気が付けば中学生になって、僕の周りは少しずつ変わっていった。仮面ライダーやデュエリストを目指していた同級生たちはそれぞれ現実的な夢を追い始めた。  スクールカーストは細分化し、目に見えるようないじめはなくなった。ただ細分化したのは「普通の奴」で、「嫌な奴」と「ダサい奴」はずっと底辺のままだった。  相変わらずダサい奴だった僕は次第にクラスに馴染めなくなっていった。身長は伸びず、成績も大して良くならない。そんな僕をクラスの委員長やリーダーの子たちは助けようと手を差し伸べてきた。  ヒーローになりたかった僕にとってそれはとても惨めなことだった。本来ならば僕がその立場になるべきだと思っていたからだ。差し伸べられた手を振り払うかのように振舞うと、僕は自然とクラスで孤立していった。  今思えばクラスメイト達の僕への扱い方も変わっていったと気づいた。4年生の頃はいじめから助けようともしなかった子たちが僕なんかに手を差し伸べるようになったのだ。綾野先輩の言ったとおり、大人に近づくにつれて周りの子たちは変わり始めていた。  だけど僕は変わらないままだった――。
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