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二つの「変化」
綾野先輩は僕のことを弟のように可愛がってくれる。だけど決して保護者扱いはせず、時には子供同士思いっきり遊んだ。
忘れもしない、あれは夏休み初日、僕は初めて綾野先輩の家に呼ばれた。緊張しながらインターホンを押すと、綾野先輩は笑顔で迎えてくれた。
「あ、ソウくんいらっしゃい」
ランドセルも名札もつけていない綾野先輩はいつもより大人びて見える。白いパーカーにチェックのロングスカートを穿いていた。肩までの伸びた髪とトレードマークの赤いヘアピンは変わらない。
「お、おじゃまします」
綾野先輩の家はなんてことない普通の一戸建てだったが、僕は胸が跳ねるのを感じていた。リビングに入ると先輩の匂いがした。
「今日はお母さんも姉さんも出かけてるの」
僕は少しドキッとする。そしてそのままリビングのカーペットの上に腰掛ける。
「麦茶かジュースでも飲む? 暑かったでしょ?」
「うん。麦茶がいい」
少しすると先輩が二人分の麦茶をもってきた。初夏にしては暑い午後だった。でも綾野先輩の部屋はクーラーが効いていて涼しかった。
僕が麦茶を飲み終えるのを待ってから
「ゲームでもしよっか!」
と先輩が誘った。
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