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俺のやってきたことは勝手で我が儘なことだよ。何の解決にもなっていない。
こうしろああしろなんて言わないけどさ、結局言ってることは大人のキレイゴトなんだ。正義ぶった夢絵空事を理屈で固めて、あたかも正しいように見えてしまう。俺が望まなくても。
俺が言ってることは「正しい大人の警察官が示してくれること」として彼らの耳に届くんだ。それが本当に正しいか間違ってるかなんて子どもの彼らには関係なくて、単なるアドバイスでもなくて、もちろん説教とかでもない。
彼らが欲しがってるのは、多分、迷ってる自分たちに希望を持たせる言葉なんだ。
明日も生きてみてもいいかな。ちょっと頑張ってみようかな。なんだ、こんなちっぽけなことだったんだ。
そんな風に思える、自分に思わせてくれるような言葉を彼らは欲しがってる。だから、それを言うのは俺じゃなくてもいいんだ。
俺は「警察官」っていう職業柄、そんな風に迷ってる子どもと接する機会が多い。ただ、それだけなんだ。
でもさ、それでも、そんな中にでも、俺の思いはちゃんとあったと思うよ。どうかこうしてくれ。こうしないでくれ。どうか、君たちはそうあってくれ。
いつだって彼らの姿を自分たちの過去の姿に重ねてきた。苦しくて、どうにもできなくて、痛みを感じ、憤りを覚えた。
俺たちも君と同じだったんだよって、俺は彼らに伝えたかった。同じような道を辿って歩き続けて、今こうして生きているんだよって、伝えてあげたかった。
俺は子どもだったから。同じように子どもで、それでもなんとか大人になれた、そんな人間だったから。
立派になれなくてもいいんだよ。失敗だってしていい。迷っても、怒っても、泣いていい。その分、笑って欲しい。笑って、生きていって欲しい。
ほら。俺の言ってることは彼らのためにならないだろ?
警察官の制服を着てるとどうしても「正義の味方ぶった」考えに近づいちゃうのかな。
俺はそんな話を何度もした。
荷物を拾ってまた歩き出せた子どもはいいよ。でも全員がそうなれない。
それも仕方がないことだ。だって、俺たちは弱くて脆い子どもなんだから。
いつまでだって待ってられるよ、俺は。急かしちゃいけない。自分で立って歩けるようになるその時まで見守るのも、大人になった人の役目だ。
しっかりやれよ、みんな。
「子ども」がどんなものか知ってるのは子どもだった大人だけだ。子どものままでいる大人には「子ども」を語れない。理解できない。
彼らを支えられるのは同じ「子ども」じゃないんだ。一緒に悪戯をして怒られるのに怯え、間違えを繰り返す同胞じゃない。
守って、育てることができる大人が彼らには必要なんだ。
子どもが自由に外で遊べるために。頑張ろうな、同級生。
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