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少し話を巻き戻し~昨夜の会話・ゆあんママ~
こんにちは。
私はゆあんという名前の娘をもつ母です。
私の名前については、この際、秘密にしておきましょう。
夫もいますが、こちらも名前はいいません。
今言っておきたいのは、たった一人の子供であり、風邪の一つもひいたことのないゆあんが大病で入院してしまったということです。
今日ここに書き記すのは、そんなときの、私と夫の会話です。
「ゆあんの病気を治すには、あれが一番よく効くんだろ。ほら、もふもふしてるとか何とか……。」
夫が突然そんなことを言い出したのは、もう辺りも薄暗くなった夜でした。
「何、モフモフしたものって?」
しばらくの沈黙の後、私は聞きました。
「えっと、確か、えっと、たぶんなんだが、えっと、〔やわらかいもふもふクリーム!もっふもふの塗り薬!〕っていうCMで。」
〔〕の中の言葉とニャオンという鳴き声が重なりました。
飼いネコのポチです。
「ポチ!」
と怒鳴ろうと思いましたが、廊下を走り去っていく音を聞いた私は考え直しました。
「それで、何のCMって言った?」
「ほら……。」
もう一度繰り返した夫のせりふに、私は言いました。
「そのCMちがうわよ、『やわらかいふわふわクリーム!ふっわふわの塗り薬!』でしょ。」
たまにしか流れないCMなので、間違えて覚えてしまったのでしょう。
そういえばあの薬は、ある病気にのみ効く薬ということでした。
確かその治せる病気が、ゆあんの病名と同じでした。
「買ってくる!」
「ドラッグストア、閉まってるんじゃない?」
「いや、トレーンドラッグストアが二十四時間営業だった!」
あわただしく出て行った夫はしばらくして戻ってきました。
「買ってきた。病院の人はこの病気はまだ薬が開発されてないのどうのと言っていたから、この薬のことはしらないはずだ。届けに言ってこよう。」
「ええ、明日ね。今日行ってももう閉まってるわ。」
というわけで、次の日。
私たちは病院に出かけました。
ミーとポチにあいさつをしようと思いましたが、見当たりません。
これまでも二匹で出かけることが何度かあったので、そのうち帰ってくるでしょう。
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