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プロローグ
私立煌柳高校は、特進科と普通科に分かれている。
特進科は、裕福な子供の集まりである。稀に秀でた者が通う事もあるが、あまり居ない。普通科は、一般の人が通っている。煌柳高校は、特進科も普通科も偏差値が高い。
しかし、毎年定員割れしており憧れの高校である。普通科の生徒は、特進科の生徒と関係を持ちたいと希望を持ってやってくる。特進科の生徒は、他の学校より設備が整っていて過ごしやすい為、入りたいと希望する。
そんな高校を運営しているのが、理事長こと桜ノ宮 憂妃である。透き通るように艶やかな黒色の長い髪。溢れるような大きな瞳。彼女の容姿は、誰もが虜になるような姿をしていた。
年齢は15歳。10歳にして海外に留学し、2年のスピードで大学院までを修得し、その後は学校を建設したり、海外で商品を販売したりしていた。
しかし、若すぎる為、何かと難癖をつける輩が居ると面倒なので、表面上は校長として自分の執事を就かせ運営している。表に立つことは無いが、試験の問題や採点の確認、行事や設備の点検、生徒や先生の把握等誰も見ていない所で全てを確認し把握している。
今は、理事長室に隠り今年度の新入生の確認を行っていた。
「今年も、定員いっぱいね。嬉しい限りだわ」
椅子に座って、生徒一人一人の資料を見ながら微笑んでいた。
「これも一重にお嬢様の実力かと存じ上げます」
185cmの身長にショートの黒髪、眼鏡を掛けて執事服を身に纏い憂妃の傍に控えている男性が1人。名前は、大野 竜、桜ノ宮家で執事をしている。
憂妃が小さい頃、道端に倒れていたのを見つけ拾って来た。最初は、皆が身元不明の男性を不審がり追い出そうとしたが、憂妃がさせなかった。暫く経ったある日の事、憂妃の誘拐事件が起きてしまい、竜が単独で憂妃を無傷で助けた事から信頼を得て、それ以来憂妃専属の執事をしている。
「ありがとう。でも竜が校長として仕事をしてくれなかったら出来ない事だわ。本当にありがとう」
「勿体なきお言葉です。お嬢様のお役にたてることが私の幸せです」
竜は、心身とお辞儀をした。
「ふふっ。いつか私以外に、竜を幸せにしてくれる人が現れると良いんだけど…あっ!でも、そうしたら私のお世話はしてもらえないわね。困るなぁ」
憂妃は、眉を寄せて困ったように考え込んでいた。
「心配はご無用ですよ。お嬢様のお相手が見つかるまで、私は相手等探している余裕はありませんから。例え相手が居ましても、私は生涯お嬢様に仕える所存です」
竜は、至って真剣な眼差しで憂妃に言っていた。
「…竜の子供まで仕えそうな勢いね」
「はい。私が厳しく教育してお嬢様に不自由が無いよう努めます」
「………………ありがとう」
憂妃は、少し呆れてしまった。
私が、竜を拾ったから恩を感じて居るんだろうけど、小さい頃助けて貰ったから帳消しなのにね。…でも、竜が幸せって言ってるなら良いのかな?
憂妃は、竜を見つめながらそう思っていた。
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