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対立
寮に向かう為歩いていると、向こうからなにやら騒がしい集団がやって来た。
集団は、由樹と彰の姿を見るなり中心の人物に伝えて、去っていった。中に居たのは伊集院樹と累だった。
伊集院 累。
樹の弟。一卵性の双子の為、顔はそっくり。性格も殆ど同じ。いつも2人で行動している。周りは2人の区別が付かない。親も自分達の区別が付かないので気にしていないが、たまに入れ替わって行動する事もある。
「由樹~。伊集院君が居るよ~。何かあるのかな?」
彰は、先程入学式で、新入生代表を務めた樹が居たので目を輝かせた。
「大方俺に用事だろうな」
由樹は、溜め息をついた。
「…?」
彰は、不思議に思っていると伊集院兄弟が近付いてきた。
「「やぁ、君が幸坂由樹だね」」
見事にハモっていた。
「そうだ」
由樹は、無愛想に答えた。
「こいつが俺達より優れているの?見た目チャラチャラしてる奴が?」
「累、人は見た目によらないって言うだろう」
「普通科のSクラスに負けたのか、信じられないね」
「あぁ、俺もだ」
伊集院兄弟は、2人で話し合っていた。
「由樹、なんだか凄い言われようだね」
彰が、由樹の耳元でそう声をかけた。
「言いたい奴には言わせとけば良いさ。それより行こうぜ、彰」
由樹は、呆れてそう言った。
2人が集中して話している事を良い事に直ぐ横を歩き出した。暫く歩くと伊集院兄弟は、由樹が居なくなっている事に気付いた。
「「おいっ」」
2人は、声をかけるが由樹は歩みを止めなかった。
「待て」
樹は、由樹が止まらないことに苛立ち、走って由樹の肩を掴み自分の方へと振り向かせた。
由樹は、嫌そうな顔をして振り向き、自分の肩を掴んでいる手を払いのけた。
「あっ?何か用か?」
由樹は、相当不機嫌である。
「さっ…先程から呼んでるじゃないか」
樹は、由樹の圧力に少し怯んだ。
「はぁ?今時、おいって言葉で止まる奴が居るかよ」
「…っ」
由樹の言うことも最もなので、悔しそうに顔を歪めた。
「じゃあな」
由樹は、後ろ手に手を降りその場を去っていった。
彰は、心配そうに2人を交互に見詰めたが、由樹についていった。
「彼奴が俺達を負かした?嘘だろう?」
樹は、その場でポカンッとしていた。
「きっと何かの間違いだよ。次のテストで証明されるさ」
累も信じられなかった。
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