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「…っ…では、この学校の理事長は現在何処にいる?」
二階堂は、苦し紛れにそんな事を聞いてきた。
「理事長は、海外にいくつか事業を持ってるからな。煌柳高校にも時折帰ってくるが、現在はエジプトに視察に行ってる頃じゃないか?…って、二階堂はこの答えを持って居ないよな?」
由樹は、そう答えると、二階堂は解答も分からずに問題を出すのかと呆れ返った。
「…っ、…そんな答え不正解だ…」
そうだ。こいつは口からでまかせを言っているだけだ。神出鬼没な理事長の所在等分かる筈もない。不正解だ不正解。二階堂は、そう思い自分を納得させた。
「いえ。正解です。理事長に昨日連絡した所、エジプトに居るそうで、あちらのお土産を送ると言っていました」
竜が、そう答えた。
「…うっ、嘘だ」
「本当です」
まだ、納得のいかない二階堂を他所に来客が訪れた。
「お忙しい所すみません。宅配です」
丁度タイミング良く宅配のお兄さんが現れた。当然、理事長からの贈り物だ。
「ご苦労様です」
竜は、印鑑を押し荷物を引き取った。
「ありがとうございました」
宅配のお兄さんは、ニコニコ笑って元気良く帰っていった。
「丁度、届きましたね。開けてみますか」
竜は、そう言って丁寧に箱を開けると、中からお菓子やお茶が入っていた。どれもエジプトの物だった。
「これで、理事長がエジプトに居ることが分かりましたか?」
竜は、エジプトのお土産を二階堂に見せ付けた。
「…ぁっ…」
二階堂は、膝をつき口をパクパクさせて顔が青ざめていった。
「そろそろ納得が行きましたか?」
竜は、二階堂にそう聞いた。
「…まだだ…まだ終わってない」
二階堂は、膝にてをかけながらゆっくり立ち上がった。
「まだやるのかよ」
由樹は、軽くため息をついた。
「私の、今日の朝食はなんだ?」
二階堂がそう聞いた途端、その場に居た先生方は呆れ返った。何言ってるんだ、この先生はと皆が目で訴えていた。
「朝食は、蜂蜜たっぷりのパンケーキとブラックコーヒーだろ?」
由樹は、呆れながらそう答えた。
「お前…何故それを…!!」
二階堂は、驚愕した。
「毎朝、同じものしか食べないからだろ。因みにネクタイは、毎朝愛娘に選んで貰っている。昼食は、愛娘と同じにしたいが為に、奥さんそっちのけで自らお弁当を作っている。休日は、愛娘が出掛けると後をつけようとするが、奥さんにいい加減にしなさいと毎回怒られる。寝室には、愛娘のアルバムが数えきれない程置いてあり、寝る前には必ず見る。今週の楽しみは、愛娘にまだ休日の予定が入って居ないからランチに誘うつもりだ」
由樹は、そう二階堂のプライベートを語っていた。それを聞いていた周りの先生方は、退いていた。
「何故そこまで!」
「全問正解だな。じゃぁ、今週の愛娘の予定は、俺とデートな」
由樹は、ニヤリと笑って二階堂を見つめた。
「くぅ…っ…」
二階堂は、とても悔しそうに由樹を見詰めていた。
「これで由樹君が優秀な事が理解出来ましたね」
竜は、ニコリと微笑んで二階堂を見詰めた。心なしかもう関わるなと圧力をかけている気がするのは気のせいか。
「…」
二階堂は、何も言い返せなかった。
「由樹君もありがとうございます」
竜は、優しく微笑んだ。
「いや。デートがかかってたからな。それじゃぁ、午後の授業が始まるから俺は行くぜ」
由樹は、ニヤニヤ笑いながら職員室を後にした。
二階堂が復活したのは、放課後だったと言う。
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