48人が本棚に入れています
本棚に追加
その日の夜。
二階堂は、自宅で愛娘に土下座していた。
「彩香、すまない。お父さんの不手際で今週末、学校の問題児とデートしてくれ」
二階堂は、涙を流しながら彩香に土下座した。
「えっ?どう言う意味?」
彩香は、若干顔をひきつらせながら父に聞いた。
「彼奴が、問題を全問答えられたら彩香とデートさせろと言うから…。お父さん、彼奴が答えられない問題を出したつもりが全問正解したんだ。…それで…」
二階堂の声は、徐々に弱々しくなって行った。
「娘を売ったのね」
彩香は、父の行動に呆れて溜め息をついた。
「…すまない」
二階堂は、言葉もなかった。
「それで?デートのお相手は、頭が良くてそれで顔は?イケメン?」
彩香は、父にやっつけで聞いた。
「幸坂由樹と言って、チャラチャラした奴だ」
「…幸坂由樹?」
彩香は、驚いて目を見開いた。憂妃は、学校に通う前に彩香には話しておいた。いくら親友と言っても彼氏と同室で学校生活を送る事は、話しておかなければならない。彩香は、憂妃の事は信用している為、二つ返事で了解してくれた。
「ああ、学校の問題児だ」
「…良いわ。10時に駅前で待ち合わせしましょうって伝えて」
彩香は、憂妃と買い物が出来る事を内心喜んだが顔には出さなかった。
「彩香…」
「お父さんは、着いてこないでね」
彩香は、そう言って自分の部屋に戻っていった。
「本当にすまない」
二階堂は、項垂れた。
「あらあら」
それを見ていたお母さんは、優しく微笑んだ。
次の日。
二階堂は、仕方がなく由樹を尋ねた。
「今週末、駅前に10時だ。遅れるなよ」
娘からの伝言を伝え、足早に帰っていった。
「約束守るなんて、二階堂も律儀だな」
嫌な相手でも約束を守るなんて、二階堂は本当真面目だな。まっ、それだからこの学校の教師に選んだからな。そう思いながら、由樹は優しく微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!