対立

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その日の夜。 二階堂は、自宅で愛娘に土下座していた。 「彩香、すまない。お父さんの不手際で今週末、学校の問題児とデートしてくれ」 二階堂は、涙を流しながら彩香に土下座した。 「えっ?どう言う意味?」 彩香は、若干顔をひきつらせながら父に聞いた。 「彼奴が、問題を全問答えられたら彩香とデートさせろと言うから…。お父さん、彼奴が答えられない問題を出したつもりが全問正解したんだ。…それで…」 二階堂の声は、徐々に弱々しくなって行った。 「娘を売ったのね」 彩香は、父の行動に呆れて溜め息をついた。 「…すまない」 二階堂は、言葉もなかった。 「それで?デートのお相手は、頭が良くてそれで顔は?イケメン?」 彩香は、父にやっつけで聞いた。 「幸坂由樹と言って、チャラチャラした奴だ」 「…幸坂由樹?」 彩香は、驚いて目を見開いた。憂妃は、学校に通う前に彩香には話しておいた。いくら親友と言っても彼氏と同室で学校生活を送る事は、話しておかなければならない。彩香は、憂妃の事は信用している為、二つ返事で了解してくれた。 「ああ、学校の問題児だ」 「…良いわ。10時に駅前で待ち合わせしましょうって伝えて」 彩香は、憂妃と買い物が出来る事を内心喜んだが顔には出さなかった。 「彩香…」 「お父さんは、着いてこないでね」 彩香は、そう言って自分の部屋に戻っていった。 「本当にすまない」 二階堂は、項垂れた。 「あらあら」 それを見ていたお母さんは、優しく微笑んだ。 次の日。 二階堂は、仕方がなく由樹を尋ねた。 「今週末、駅前に10時だ。遅れるなよ」 娘からの伝言を伝え、足早に帰っていった。 「約束守るなんて、二階堂も律儀だな」 嫌な相手でも約束を守るなんて、二階堂は本当真面目だな。まっ、それだからこの学校の教師に選んだからな。そう思いながら、由樹は優しく微笑んだ。
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