対立

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週末。 「行ってきます」 彩香は、お洒落をして出掛けていった。 「すまない。気をつけてな。17時までには帰るんだぞ」 二階堂は、そう言って申し訳なさそうに彩香を見送った。 彩香は、10時少し前に駅前に着いた。 駅前には、人だかりが2箇所に出来ていた。 彩香は、どちらかに憂妃が居ると思い人だかりの方へ向かって歩いた。 1箇所を覗いてみると、双子の兄弟が人だかりを作っていた。 「樹様~」 「累様~」 周りの女子達が歓声を上げていた。 「幸坂を冷やかしに来たのにこれじゃぁ動けないな…」 そう、由樹がデートをすると聞いて冷やかしに来た伊集院兄弟がそこには居た。 駅前に着くと女子達に囲まれ、身動きが取れなくなった。 直ぐ隣で目的の人物が囲まれて居る事にも気付かず、その場から動けなかった。 「あら?違ったみたい」 彩香は、目的の人物では無かったので、人だかりから逸れてもう1つの方へと向かった。 人だかりの人物は、ヘッドホンで音楽を聴きながら待っていた。黒く輝く長い髪に大きな瞳で、白いワンピースを着ており、誰が見ても美女がそこに居た。 人だかり達は、何とかお近づきになりたいと挙って声をかけていた。しかし、憂妃は音楽を聞いており我関せずだった。 彩香は、お目当ての人物が居たので人混みを掻き分けて入っていった。彩香が近くと憂妃は気付いてふわりと笑った。周りの人物の心を鷲掴みにする程、破壊力抜群だ。 「憂妃、おまたせ」 彩香は、そんな憂妃に向かって笑顔で声をかけた。 「彩香、久しぶり」 憂妃は、ヘッドホンを取って鞄にしまった。 「ねぇ、ここから早く抜けましょう」 彩香は、憂妃の手を取り人だかりから抜け出していった。 「…?何今の?人間石像?」 憂妃は、首をかしげて彩香に聞いた。 「まぁ、そんな所よ」 本人は気付いていないが、先程彩香に向けた笑顔で人だかり達は惚けてしまい、動かなくなっていた。まるで石像の様だった。彩香は、毎度そんな光景を見ているので、気にせず歩き出した。 彩香も憂妃程では無いが、美女の為2人で歩くと目立ってしまう。すれ違う人達が皆、振り替える程だ。あまり1ヶ所に留まっては居られなかった。
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