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リビングに向かうと、ソファに1人座って待っていた。
短髪の茶色い髪を逆立てて、キツメの細い目が印象的な男子生徒がいた。見た目は見るからに不良と思われる印象だが、とても綺麗に座っていた。
彰は、男子生徒を見てポカーンっとしてしまった。
「…ん?来たか」
男子生徒は、彰が来た事に気付いて顔をあげた。
「えっ…?何で…?どうして、ここにいるの~?」
彰は、男子生徒がここにいる事が理解できない様でおどおどしていた。
「彰が、入学するって聞いたから俺も入学したんだ。一緒に学校生活を楽しもうと思ってな」
男子生徒は、笑顔を向けながら清々しく言った。
「えっ…だって、憂妃ちゃん…女の子なのに…」
「流石、彰だな!俺の変装完璧だと思ったのにな。まぁ、分からなかったら分からなかったで悲しいけどさ」
髪の毛を少し触りながら、直ぐに見破られたことを少し残念そうにしたが、ははっと笑った。
「それは分かるよ。何年幼馴染をやってると思ってるのさ~」
彰は、頬を膨らませてムスリとする。
「15年」
由樹は、ニカッと笑って答えた。
そうこの男子生徒は、憂妃が変装した者だった。名前は、幸坂由樹と言う。
憂妃は、長い黒髪を隠し茶色のウィッグを着けた。大きな瞳を隠すように、顔にマスクを着けて全体的に印象を変えた。体型も女性特有の姿を隠すように、男子の様な体つきを特殊加工し装った。普段のかけ離れた容姿に彰は別にしても、誰も憂妃とは気付かないだろう。
理事長として仕事をする姿を見た者も居ないが、念の為変装しなければならない。何故、性別を偽ったかと言うと彰が普通科の生徒として入学するのが心配だったからだ。男子生徒に変装すれば、寮も同室で居られるし並んで歩いても親友としか思われない。そして何よりお嬢様としての自分とは真逆で本当の自分に結び付けられる者は居ないだろう。何かする度に世間に騒がれるのは面倒だった。
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