問題

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その日屋敷内では、桜花「おうか」に対する審議で、家来たちが騒いでいた。新参者の桜火を自分たちの仲間として一員として、認めるに値するか?それとも、不都合な人間として、処罰するかを・・・。家来たちに囲まれながら、秀桃「しゅうとう」が入って来るまで、お辞儀をする桜火。 「新任そうそうに揉め事を起こしよって、よっぽどに自分の力に過信か、見せつけたかったのか?」 飯母「いいぼ」、秀桃の家来。左先に座っている男。 「ふふふ、飯母殿。もしそうだとしたら、とんだ。無能の人間ですぞ?己の先行きを考えれないなとは・・・。しかも、「天誅」とは、天に代わって罰を下すという意味。これは本来なら「下剋上」に使われる。よって下々の浪人じゃなく、我ら支配する側に向けられる言葉だ。お前はそれをやった・・・しかも、死体でだ。これは、明様な謀反の疑いありだなぁ・・・桜火殿?」 「ははは、たしかにじゃ・・・桜火殿?なにか、部田ふた殿に、言い返す言葉は無いのか?」 部田。秀桃の家来。右先に座っている男。いわゆる主の秀桃からしてみれば、左手に位置する人間。この意味は、奉行「政策、軍事作戦を担う役職」に辺り、参謀としての位置になる。先ほどの飯母は、右手側。この意味は、戦闘における武将として位置にあたる。この二人は、洲番城内では古参中の古参。実権を思うように、したい考えとしては、若手新参の動きは邪魔なのだ。その時ふすまが開き、秀桃が入ってきて、中央に敷かれている座布団に座った。 「さぁ、桜火よ。今回の不始末についてだが・・・」 「今じゃあ屋敷の中が騒がしいぜ」 大護山「だいごさん」の廃屋で、漉「こす」という頭髪が異常に伸びきり体が隠れ、手と足がでている男の子が、稟「りん」という昨夜、綾たちと一緒にいた赤いリボンをした女と話していた。 「それは、魅影「みかげ」が昨日屋敷にて、桜火のこれからの行動を聞いてきたから、私たちは夜にいたずらをしてきたのに・・・揉めてくれなくては困るわよ」 「そうね、せっかく私が情報を掴んで、みんなが行動を起こしてくれたのに、効果無くては困りまする。花冠「かかん」も思いまするよね?」 魅影。癖のかかった長い黒髪が特徴の女の子。そして花冠という、お花を握って見つめている女の子がいた。 そのころ洲番城に来ていた綾「あや」たちは、町の中で干しスルメを齧りながら歩いていた。 「今頃、桜火って野郎は、主の命を受けた飯母らによって、処罰されているだろうな」と千年「ちとせ」が話しかけてきた。 「そうだろな」 「・・・」 「おいおい、どうした?桜火ってやろうに教育されるのが、嫌で始めたろう?喜べよ!」 「うん?そりゃあうれしいが・・・まぁ教育を受けて強くしてもらってからでも、よかったなぁって思ったなぁって」 「あ?なんだ?白蓮「はくれん」?あんなの下につくのが、良いってか?ふん、お前ら下におちたな」 いつもながらに、プライド重視の千年と気分重視の白蓮が、自分の主張をしていた。と、そこに3人の前に立ちはだかる者たちがいた。 「なんや、土臭ぇと思いきや、山っ子じゃねぇかい!」 「道理で、土臭ぇと思ったぜ。きゃははは」 「ふん、新たな死者として名を連ねるか、源平兄弟「げんぺいきょうだい」?」 源平兄弟。秀桃による商業特区政策で集められた商人の5・6男。家を継げなく、生まれ持った財産で、好き勝手に遊ぶ者達。このように、洲番城では、家を継げず家の金を使って遊ぶ者たちが、たくさんいた。 「なんや、千年?山っ子のくせに、調子に乗った発言しやがって!」 「ぶっ殺したる」 「・・・やめろ」と源平兄弟の後ろの方で、小さく言うものがいたが、制止を聞かずに、襲いかかるものがいた。 「わいらが、山っ子に舐められてたまるか!」 その男は、刀を上段に構えて襲いかかってきた。俺ら三人も刀を構えたが、男の胸とわき腹から刀が突き出て、そこから左右に男の腹部を無残に、斬り裂かれた。男を引き裂いた者は、真黒い着物を身につけた、燃えるような赤い髪が特徴の男だった。 「きぇ~相変わらず、夜叉「やしゃ」はすげぇ!」 「馬鹿な男だぜ!四資「しし」の言うことは絶対なのによ!」 さっきまで一緒につるんでいた男の死体に、唾を吐いた源平兄弟の後ろから、近よってくる男がいた。 「今朝は、お前らか?」 四資。洲番城を治める現当主の秀桃の四男。当主争いからも遠い存在。そのため同じ家督争いから省かれた者達を集めて、好き勝手にうろついている。秀桃が桜火に治安と教育をお願いする真の目的であった。 「なんだ?問題児が俺に、指図するのか?」 相変わらずの千年の上から目線は、当主の息子でも変わらなかった。それは、目上でも変わらないが・・・ すると、夜叉が千年に斬りかかった。千年もすぐさまに抜刀し、受け止める。夜叉が2本の素早い刀さばきを受け止め、弾き飛ばした。そして、千年が詰め入り「それだけか用心棒?」といい、ひざ蹴りで夜叉の体を浮き上がらせて、蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた夜叉は、脇道に積まれていた木箱の中に、埋もれて行った。千年、利き腕の右手で刀を操り戦う。「さぁて、お坊ちゃん?」と千年が振り返ると、四資は千年の首元に刀を突き立てていた。同じく四資も、右手だけで刀を操る。 「お前らか?」四資はもう一度訪ねた。しかし、プライド重視の千年は、激怒。刀を振り裂いた。と同時に、四資の刀も、千年の首を両断した。 お互いに斬られたかのように見えたが、動きの速さによる残像が斬られただけであり、千年が後ろに引いて距離を空けていた。 「くそぉがぁ!」千年は、さらに吠えたてて、激怒する。立ち合い勝負では、負かす方が断然に多い。それなのに、引く事をしてしまった。・・・させられた屈辱に、怒り吠え。刀を握りしめて、四資に斬りかかる。 「ひゃーははは、どんなに山っ子があがいても四資には、敵いっこねえっての!」源平兄弟ら四資と一緒にいる連中が、騒ぐ。 「・・・」四資はただ何も言わずに、刀を構え斬りかかる。上段切りの千年の刀と、掬いあげ切りの四資の刀。上下から二つの刀が交り合う時、二人の体は斬り裂かれずに、地蔵「じぞう」という、僧衣をまとった男がいた。 事から数十分前、寺のぬれ縁に頬杖を掻いて寝転がっている、地蔵がいた。たくさんの文字が細かく書かれた本を、ぺらぺらと捲っていた。すると、竹林のほうからやってくる男性がいた。 「相変わらずの真面目学士ですね」 「なんだ戻ってきたのか?桜火」 「はい、昨日着いて主にも、挨拶をしてきました」 地蔵。洲番城に4畳半の小寺を持つ、学士。桜火とは、同い年。同じ9歳で、外へ修行に出て行き、16の頃に戻ってきて自主制作で、住まいとして小寺を築き、学問に励んでいる。 「地蔵、あなたに頼みたいことがあるのです。引き受けてくれませんか?」 「なんだい、頼みって・・・」そう言って地蔵は、起き上がった。 「実は主の秀桃様から、教育と治安を仰せつかりまして・・・あなたの学士として、実力を見込んで私と一緒に引き受けてほしいのです」 「・・・それより、今朝の事はいいのか?街中で「天誅」とかってのが、あったじゃねぇか!家臣の飯母や部田が、目の敵にしているのじゃねの?あいつらそういう所は、ずば抜けているから」 「それには心配ご無用」竹林から別の声が聞こえてきた。 千年と四資の、斬り合いに仲裁として入った僧衣をまとった男、名を地蔵という。四資を上空へ投げ飛ばし、続いて千年の手首を、掴み投げ倒す早業だった。その後、四資は体制を立て直し、悠々と着地して、刀を鞘に収めた。しかし、千年はさらに怒り、暴れる。なので、地蔵は千年を引っ張り上げて、みぞおちを蹴った。「黙って、寝てろ」と言って。 「くっそぉ・・・がぁあ・・・」と、言い捨てて、気絶した。 「うん、元気がいいですね!」と言って、桜火は崩れ落ちた木箱の中から、夜叉を拾い上げていた。 「・・・」四資は、人が来るなりその場を立ち去るかのように、すたすたと歩いて行った。源平兄弟はあわてて夜叉を担ぎ上げて、後を追う。 「四資、止まれ」そう言って、四資を呼びとめる男が奥から歩み寄ってきた。 「月定「げってい」様」 月定。秀桃の側近で、家臣の中随一の権力者である。飯母や部田のと、敵対している勢力。情報を主とした部隊、隠密部隊の天坊衆を束ねている影の将。天坊衆を束ねる筆頭として、老人ながらも動きは優れた忍び。普段は洲番城の菩提寺(ぼだいじ)の主を務めている。地蔵の師でもある。 「なんじゃい」四資が機嫌悪そうに、返事する。 「そなたが洲番城改革の本丸、これ以上好き勝手されると困りまする・・・ゆえに、叩き直させてもらう」 「・・・」月定にものすごく顔強張らせて、睨みつける四資。 「これはお父さまの命です」と何一つ、おじけずくことなく冷やかに答える月定。
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