兄弟

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

兄弟

知尾地域内で勢力を拡大していた秀桃が死去、すぐに通夜と告別式が行われた。その後に知尾地域や上下「かみした」地域を治める、天正「てんせい」の国人の銀羽「ぎんば」が主催する会合が行われた。会合には長男の広秀「ひろひで」、二男の「二蔵にぞう」、三男の光友「みつとも」、そして四男の四資、五男の源五郎「げんごろう」が集会した。 「これからの知尾地域の守人を長男・広秀に任ずる。そして、藤幡城「ふじばたじょう」を二男・二蔵に、清和城「きょうわじょう」を三男・光友に、洲番城を四男・四資に、土林城「つちばやしじょう」を五男・源五郎にとする。先の秀桃殿もいろいろ頑張りすぎた。城人が複数の城を兼任するのもいやはやおかしいものだ。」 晩年秀桃は諸国との戦いに明け暮れ持ち城の数を増やし、権力を高めて行ったのであるが・・・。その反面の労力に、身を削りすぎて亡くなった。また光友は、二蔵よりも実力に優れていた為、町の位の高い清和城をいただいた。 その後家臣らは次のように別れた。部田と飯母は広秀に、統賢「すえたか」と雅竹「まさたけは二蔵に、取坂「とりさか」は光友に、見付からの月定が四資に、そして先代秀桃より従える猛将重北「しげきた」は、源五郎に就いた。 「四資・・・父上の居城をいただいているのだ、父の名を汚すでないぞ。訴訟の多い貴様の配慮じゃ」 光友は四資に忠告をして、その日の会合が終わった。 銀羽による人事配属が申されてから、数日後に四資が跡を継いでから重用されていた、頼屋「よりや」が光友に寝返った。その後頼屋は清和城近くの院に立て籠もった。四資は源平兄弟や吉継、梶時、水信、成丸ら四資と共にしてきた者たちを引き連れて出陣し、矢戦槍戦となり、乱戦が続けられたが、頼屋の土地から所領資産を奪い取り初陣を飾った。しかし、この事件よりも重大な出来事が四資に降りかかる。 「四資さま、これより月定は家業としての役職から隠居いたします。このご老体の不始末をお許しください」 今まで見付役で影の実力者でもある。天坊衆の月定が隠居を始めた。主な理由としては、ご老体と権力争いに巻き込まれるのが嫌で、主としていた秀桃が無くなって従える目的も無くなったと理由に、四資に見切りをつけて隠居した。 事件の首謀者は光友だが、主な働きは取坂の謀りごとであった。洲番城を襲撃と頼屋引き抜きをすると、月定の排除に取り掛かったのだ。その後頼屋は、騒動を起こしたとして国人の銀羽に身柄を渡された。しかし、その後の処罰は不明のままであった。 「光友さま。後顧の憂いも無くなりました」 「霧が晴れた!まったく認めたくないものだ。同情心から町を譲り天坊衆も引き継ぎ寄って、兄を敬ない奴だ」 「光友は笑っていたか?取坂殿」 「はい、気持ちいいように」 暖簾越しに話す者がいた。これまでの事件を動かしてきた取坂であったが、さらに指示を与える者がいた。 そんな考えをよそに洲番城の屋敷内では、広秀は四資と会食を行っていた。洲番城内で内乱をすぐに鎮圧を行った四資に、広秀は地域を治める守人として労いに来ていたのだ。 「このたびの頼屋の騒動を、迅速なる鎮圧御苦労であったな。要請があったらすぐにでも駆けつけたものを」 「いいえ、兄上の手は汚しません」 「それは有り難い。そう言えばだが後日また会合が開かれるそうだ。銀羽さまが上下の守人として、二蔵に任命するそうだ。もともとの中内が治めていたが、頼屋が中内と繋がっていたらしく知尾の弱体、乗っ取りのために騒動を起こしたらしい。そのことを頼屋が白状したらしい。それにより中内の処断。その後の統治を、二蔵になったらしい。それで二蔵の藤幡城は部田殿の管轄になるそうだ。今後はどうなるのかの?」 「・・・」 「そういうことだ、会合には出席しろよ」 「今回の会合には、出席できません!」 「なぜだ?」 「騒動があった後です。治安回復に務める為に余裕がありません。兄上・・・いや広秀さまより事情の説明をお願いします」 四資は広秀に頭を下げて懇願した。 「そっか、わかった」 広秀も四資に懇願されては、これ以上申せなくなり頷きながら洲番城を後にする。 二人の話しあいは終わり、広秀は城に戻って行った。守人の居住の城は、」小間荷城こまにじょう」という実戦的な山城である。一つの小山を要塞化した城で、頂に物見櫓や屋敷を設け、麓に役所や馬小屋などを配置している天然要塞だ。広秀が小間荷城の城門に就くと城門は開門されなかった。 「どうした!城主の広秀の帰還である。開門せよ」 怒号で叫ぶも城門は、いっこうに開く気配がなかった。すると背後から光友とその取り巻きがやってきた。 「あ、兄上どうなさっているのですか?」 「あ、光友・・・すまぬ、ちょっともたついているだけなので、しばし待たれよ」 「兄上・・・わしはなぜ兄上がここにいるのか?を聞いているのです」 「こ、ここはわしの城じゃ。わしがいて何が悪い?」 「兄上はわしを守人にしてやると言った。なのになぜ二蔵なのじゃ?それに洲番城を得る為に四資の暗殺もなぜ裏切った?裏切りは世の仇なり、よって貴様を誅すべし!」 「お、おい光友・・・開けろ!早く開けろ!」 「飯母殿、部田殿、こたびの尽力感謝痛み入ります」 「うむ、長男とはいえあの体たらくにはついていけぬのでな・・・」 「では、これよりはわれらに・・・」 「いや、わしらは主君を守れなかった為、国人の銀羽に擁護してもらいながら働く」 「な!なんということを、それでは我々との連携は?」 「連携?約束は広秀と四資の衰退への助力だったはず、頼屋や月定の消失に、広秀殺害。要件は十分じゃが?」 「ぐぅ・・・痛み入ります」 このようにして、今回の騒動は出来上がっていた。 そして、一番喜んだのも、この者であった。 「よくやったぞ!飯母と部田、その他らのおかげだぞ」 飯母と部田は、褒め言葉をいただくと深々と頭を下げた。 「はっは、なにかも大殿の指示にしたがったまで、これで我らの領地安泰も叶います」 「うむ、残る秀桃の倅の、二蔵、光友、四資、源五郎を一掃すれば終いじゃな」 銀羽は」古河こが」城の銀の館を居城としている国人である。 「おっしゃる通り、二蔵は人徳を持っても器量に欠けるお方、光友は我らの傀儡も同然。四資は以前からの荒くれ者でして人徳も持っておらず、家臣団もかの人に就くものもいない。源五郎は家臣の重北は強者ですが、知に欠けて補佐にあらず。母は戦経験が無ければ論外です。各個撃破も簡単にございます」 部田が銀羽に、各情況を報告する。 「じゃろうな・・・二蔵から四資に、源五郎と光友を傀儡して安定後にでも、毒などで誅殺しておこう」 部田の報告を、思考し考え抜いた答えを出した。それは飯母や部田には驚くべきものだった。 「四資・・・いや四資じゃなく・・・二蔵からですか?」 「うむ、二蔵は人徳がある器量などなくとも後から身に着けていくもの。人徳があるとこの度の騒動によって動き出し、光友を討たれる。そうなるとこちらも手出しができんのでな」 「なるほど、わかりました。ただちに進めます」 しかし、事はすでに遅く光友の実践支配している小間荷城は、四資と二蔵の連合軍に落とされていたのであった。四資の軍は定巖院の連れと20人程度の城下町からの召集兵。変わって二蔵の軍は、経験有り余る年40の統賢と新参の雅竹が率いる60人の軍であった。兵数や兄弟の立場から四資が総大将である二蔵に片膝をついて、お辞儀をしていた。 「お見事であります、兄上」 「やめておくれ、四資。我らは兄弟であるぞ。兄弟に上下関係などあってないものだ。光友は血迷って大兄を殺してしまう暴走を犯してしまった・・・。なので、我らが立ち上がったまで、光友は、清和城に落ち延びたと聞いている。これに懲りて馬鹿な考えはしないであろう。これからは兄弟仲良くやっていこうぞ」 これが二蔵であり、二蔵の人徳である。 その頃、桜火が率いる定巖院の廃屋組「綾・白蓮・千年など」は、合戦後の清和城の襲撃を行おうとしていた。 清和城内城下町の一つの商家に、桜火が率いる廃屋組が立てこもっていた。桜火は秀桃の死去後四資につく家臣がいなかった中、教育の立場から面倒を見ていた桜火や地蔵は、自然と四資の補佐をしていた。それから四資は昔から連れ歩いていた源平兄弟を側近の小回り集団、母衣部隊として編制。廃屋組は以前から月定の率いていた天坊衆として別働隊となっていた。 「予定通り、四資らの本隊が小間荷城での戦に勝利して光友の部隊を破ってくれています。今の清和城には敗残兵しかいなく、我々の襲撃だけでも十分に光友の首を獲ることができます」 桜火は廃屋組全員に檄を飛ばした。それを受け答えるように、全員も呼応した。 「「おおー?」」 それに続いて、桜火は更なる檄を送る。 「皆さん安心してください。これまで訓練で皆さんは十分にこの任務を遂行するだけの力はあります」 清和城は少数の廃屋組に制圧もあとわずかまで進んでいた。理由は光友が基本戦闘の指揮をとるのだが、前回の二蔵と四資との戦により戦意を喪失していた。代わりの指揮としてこれまで光友のブレーンとして暗躍していた取坂が軍の指揮をとっていた。しかし、戦後の戦闘なので兵の数も消耗しており、まともな戦力にはならず、現状に至っている。 桜花たちは西門からの正面突破を仕掛ける。正々堂々と攻めて、光友軍の戦意を崩すことが目的だ。さらに追い打ちとして圧倒的な戦闘力の高い千年・白蓮、そして綾の3人が東門からも襲撃を始めた。 「おい、綾。院では桜花とこそこそして赤ん坊に尻毛が生えるほどまで行ったかもしれないが、そんな力では死ぬかも知れないぞ」 「・・・なにが、言いたい?」 「足手まといはかえったらどうだと言うことだ」 「帰りたいのか?」 「貴様ぁ」 「はいはい、二人ともそこまで、開始時間だ」 綾に向かって千年が刃を振り上げたのを、白蓮が仲裁に入った。振り上げた腕は東門に向かって振り落とされる。東門は爆音とともに砕け散る。 「忠告したんだ、死ぬなよ」 「・・・稟みたいなことを言うなよ。気持ち悪」 二人が話している最中に白蓮は、城内へと進む。それを追うかのように、綾を素直に気遣えない千年も進み。最後に綾も、抜刀して城内へ。 「こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃなかった。」 ご殿中で頭を抱え込みながら、脅える光友に兵が現状報告をする。 「殿、西の門から襲撃。門突破後の西屋敷を迎撃に向かう直後に反対の東側からも襲撃を受けて城内はただでさえ大混乱なのに、倒れた味方の兵士が動き出すことも。この不可解な現象に逃亡しだす味方も・・・」 「え、ええぃ、いちいち報告しとらずに反撃しろ、それが貴様ら兵の役目だろうが」 「・・・はは」 しかし、兵はその場から立ち去ろうとはせずに、立ち上がって障子を蹴り破って侵入してきた。 「失礼します。殿」 「な、な、なんだ?貴様」 「ええい、くそぉ長兄の広秀を殺したのに、これでは・・・」 物見櫓の上で状況確認をしている取坂が、城内で押されている自軍を見ていて焦っていた。見渡した頃には、足元にまで廃屋組の千年が迫っている。千年は清和城の兵を、次々と切り裂いていく。取坂が苛立って手すりを何度も叩いていると、物見櫓が崩れ落ちた。千年の斬撃が物見櫓を柱を斬り倒すが、櫓の展望台は塀の反対側に倒れこんだ。塀の反対側には誰もおらず、取坂はある意味逃げ場を確保した。 「かぁ。四資め・・・あんな化け物を手懐けよって・・・」 「取坂様、早くお立ちを・・・逃げましょう。」 千年が塀を壊し、追いかけてくる。部下に言われるがままに、取坂はその場を立ち上がり逃げるが。角を曲がると、兵を切り倒した綾が立ちふさがっていた。 「あ、重要人物発見!」 綾を見かけてすぐに襲い掛かる兵を、横切りに倒して取坂に近寄る。すると後を追っかけて来た千年が、綾に話す。 「綾、手を出すんじゃねぇ!俺様の獲物だ」 無言で刀を鞘に仕舞い、後ろに振り向く。すると取坂は綾の横を、通り過ぎらず。怒って刀を抜き取り、綾を斬りにかかった。しかし、綾は回転して鞘で項を叩き付けた。叩き付けられた取坂は、そのまま気絶して、前のめりに倒れる。これで戦いは丸く収まったのだが・・・。 「貴様ぁ、手を出すなと言っただろうが!」 迫りかかる千年の刃に、すぐさま抜刀して受ける。 「これは正当防衛だ!敵が襲い掛かってきたのだ、仕方ないことだ」 「黙れ!口答えするな、それなら斬られていろ!」 押し蹴りして、綾を突き飛ばし塀に打ち付ける。 「とんだ足手まといだ。こんな戦いで我が陣営に重症患者が出るなんてな?ここで斬っても貴様は、そういう扱いだ」 詰め寄りながらそう言い残して、刀を振り落とす。 綾は怪我も無く、切り傷も無く。千年は刀を鞘に仕舞い、後ろを振り向いて。「命拾いしたな」と言い残した。それからすぐに、桜花がやってきた。 「二人とも大丈夫か?」 「ええ、綾が苦戦していましたが、駆け付けて取坂を確保しました」 「・・・」 「・・・そうか、大丈夫か?綾?」 ほんの少し間があったが、桜花は綾に手を差し伸べた。綾もその手を掴んで、立ち上がった。 「残りは光友です?すぐにでも奴の確保を!」 千年は疑問を抱かれる前に、桜花に進言した。しかし、光友は俺らが取坂の確保に戦っている間に、白蓮によって確保されていた。このようにして清和城の戦いは終わった。 光友と取坂を拘束で、抵抗を重ねる清和城の兵に戦いを止めさせた。それからは広場に兵と死んだ兵を集めた。その周りを数人の死兵に見晴らせ。残りの死兵は、自ら山のように積み上がって、火をつけた。人間は死んでから時間の経過とともに腐敗の進行が早い。その後に疫病を、発生しやすくなる。その為に通夜と葬儀後に、火葬して遺骨として供養する。その後処理を、稟が行った。稟のアニマ「踊り毛」は、意識の無い生物を操る。その為に対軍として役に立つ。 それから報告を受けた四資と二蔵の軍が、清和城の前に着陣する。四資から入城し、四資の入城で安全を確認した二蔵は、軍を進め清和城に入城。二蔵は光友と取坂の処刑を考えるが、それを四資が止めた。 「二蔵様ここは銀羽殿を呼び立ててから、采配を任せては?」 「何を言うのか?それでは銀羽に、すべて持ってかれるぞ?我らの手柄も!奴らも!」 「それでもです!銀羽様は国人です。その銀羽様を立てるのです!采配も伺わずに裁くと、反逆とみなされて殺されます。立てることにより忠誠心を得るのです!」 「・・・くそぉ」 それから光友と取坂は、銀羽の命令により。切腹後に斬首された。両者の首を飾り立てながら、銀羽は何も申さずに、清和城を後にした。その後すぐに二蔵も統治下の上下地域の岩袋城に帰っていった。それから俺たちは定巖院では無く、洲番城の城内で活動していた。本来は四資の城になるのだが、此度の戦で守人に成り上がることになった。そのことにより守人の城である小間荷城の実権は四資に移ったのも事実だが、四資は小間荷城に移ろうとはせずに、清和城を居城に統治をはじめた。それまでの洲番城は隠居している月定の天坊衆に委任した。桜火など家臣の住まう二の丸より外の武具などが置かれている三の丸の外の曲輪という場所に住まうことになった。本来は戦の際に迎撃する場所なのだが、天坊衆のメンバーは定巖院で暮らし学問に励んでいる人達であった。その為城内に住む人がいなく、管理や守備に乏しく最低限の措置として住まうことになった。それでもこれまでの廃屋での貧しい生活から、城内暮らしとなったのである。そして俺は、離れた場所に暮らす、秋餅を呼び寄せた。 「すごいな、城の関係者として剣術の指導を受けていると聞いたが、まさか本当だったんだな」 「あぁそうだ、これで城の医者にも見てもらってはやく元気になって、俺らと頑張ろうぜ!」 「・・・綾、そうだな!」 「じゃあ綾も、頑張らないと秋餅がアニマを使えるようになったらすぐ抜かされちゃうね(笑)」 俺ら二人の友情の会話に、水を差すように背後から稟がつっこむ。 「確かに綾の場合はそうだな」 「っげ、師範」 桜火もつっこむ。俺だけでは秋餅を呼び寄せることも出来なく桜火や地蔵に相談して、城下町の桜火の旧屋敷を譲り受けて貰った。なので立会人として、秋餅との顔合わせをした。 「この子たちの訓練をしている師範で天坊衆四資の任の長でもあり。洲番城家臣団の一人でもある」 「こんな病人でもある俺に、城下町で暮らすための屋敷を与えてくださいましたこと、感謝いたします」 お辞儀をして固くなった秋餅に、桜火は優しく手を肩に差し伸べた。 「かしこまることはありません。私はただ君の話を聞き会って確信致しました。君は必ずこの世に役に立つ存在であることを、それに私は手を差し伸べただけです」 しかし、その世の中は無情にも、俺たちに落ち着いた安息の時間をすぐに奪い取った。それは四資の唯一の弟の五男・源五郎が謀反を起こし、小間荷城を占拠したのである。 小間荷城には長兄の広秀の居城でもあったことから、広秀亡き後は広秀を支えていた家臣団と統賢に統治を任せていたのである。しかし、秀桃の妻でもあり四資たちの母親でもある」夫差ふさ」が小間荷城にて行われた広秀の葬式後、何度も小間荷城を訪れて広秀の死を偲んでいた。それから夫差は小間荷城に住み着くようになり、家臣団のまとめ役となった。そして、小間荷城の統治者となった。しかし、源五郎に弱愛していた夫差は不法者でもある四資を好かず、小間荷城は源五郎を迎え入れた。このことにより守人は源五郎と公表した。その後の夫差は先走り続ける。まず最初に国人銀羽に挨拶を交わし、守人の役職を確実のものに。この交渉に完全支配を目論む銀羽も、易々と了承をした。銀羽の了承を得た夫差はさらに、次男二蔵へと同盟を依頼。銀羽の脅威から身を守るために、同盟に合意する。四資は母にも弟にもそして、一緒に戦った兄二蔵にも裏切られたのであった。 しかし、裏切られた四資は慌てることはなかった。四資は統治の繁栄のため洲番城と清和城を繋ぐ道を整備し、間の村々の修繕・商人を呼び寄せた。呑屋には四資の関係者を間者として配置し、酒に酔う通行人から口を滑らした情報を逐一収集していた。そして桜火に命令がくだった。元四資の小間荷城家臣団の5人暗殺である。 まず一人目の標的は老将山喘の暗殺。免疫機能が弱い老体に、花冠が配膳係として潜入し、異物混入を繰り返し、病死に追い込む。食べ物の一部に漉の毛を仕込まされた二人目の標的沖場は、体内で漉のアニマ「細毛」が発動、外皮とは違い柔らかい一つ内細胞に寄生しながら各内臓を攻撃し、多臓器不全で死に追いやる。「細毛」は毛が5㎝毎に細胞核があり、そこから分裂増殖を繰り返す。5㎝を誤飲すると、内細胞と融合し、ハリガネムシのような動きで暴れる。三人目は目標牛鳥は、移送中に稟が浪賊を操り、襲撃して打ち取る。3人の家臣の死亡に不信を抱く夫差は、四資の仕業と思い込む、思い込みは不安を掻き立て、二蔵と源五郎に出陣させる。しかし、戦の経験も無い夫差の出陣依頼は、浅はかであった。出陣と言ってすぐに出陣するわけでもなく、各村などから兵を招集する分だけの武器や食料を調達する。そして、兵を集めて号令を成して、各兵が合流し本隊が出陣する。この作業に一か月を有する。なので、その間にも四人目の大青を、魅影の「迷幻」が過労死に追いやる。「迷幻」は、精神攻撃系の変異能力。魅影から出る特殊なオーラが心を削る。また魅影を魔物に変えて、実戦モードにもなれる。しかし、心を削れるのはすれ違う距離なので、花冠同等に潜入。3名の死亡により実務に追われる大青の精神を日に日に削り取る。五人目の樹山を「スパーク」のアニマ有する雷が仕掛ける。手の表面から電撃放出する能力、素肌での発動のため普段は黒い手袋をはめていて、寡黙な性格。力の制御はこなせないが、間者として忍び一瞬の放電によりの心肺機能を狂わし、出陣を遅らせる。 小間荷城の南西方面に位置する四資方の清和城や洲番城に、源五郎の重北の主力勢力が配置していた。南方面に重北の副将」勝孝かつたか」、西側に同じく副将」晴盛はるもり」が守護に当たっていた。それまで源五郎が統治していた土林城は、重北と同等の権力を持つ」添通そえみち」が納めていた。土林城は小間荷城の西側に位置していた、その城を四資の軍が攻める。 「右翼の成丸隊、敵方防壁を突破。陣を乱しています。」 「か・・・よし、手筈通りの吉継の突入後、囲いの準備だ」 「はっ」 伝令の報告が戦況を、四資に届ける。槍を得意とし騎乗能力にも長けている主力の成丸が、突撃の一番槍を上げる。前戦でも光友軍の取坂の一番武将、政腰を打ち取っている程の実力だ。そして突撃後敵中腹で左にU字に旋回して敵を削り取っていくのが、主な戦法だ。そしてその後を早馬部隊の水信が、追撃を駆ける。判断思考が優れている水信が、成丸の旋回をしやすくするために、敵陣を攻めてさらに乱すと、同時に左翼の梶時が成丸と入れ替わり、突撃する。城の守備を無くすと、中部隊の吉継が城内に潜入。その後を梶時が配置し、本隊を護衛する源平兄弟が二手に分かれ左右を包囲、本隊と反対側を成丸と水信の部隊が配置して、城を完全包囲する。 それからひと時が経った後に、添通が吉継らに拘束されながら四資の前に連れてこられた。 「くそぉ、貴様らは姑息にも暗殺など汚い真似をしやがって!守人である源五郎様や二蔵様に謀反を起こすなど、義にもあらず」 「何を!貴様らが我らの職にあった守人の位を奪ったのだろう!」 「こちらは、国人の了承を得ているれっきとした守人だぞ!」 「古いな、考えが固執しておる。そんな古き大衆を、俺が断罪する」 四資は椅子から立ち上がり、刀から新たに仕入れた西洋剣を抜き取り添通に向けた。怒り刀を抜き取って四資と対峙した添通は、地面に刀の先をつけるほどに低く構える。四資は少し間を空けてから剣を顔の前で横向き構えて、左手でなぞる。この行為は刀と比べると面の広い西洋剣では相手が死角に隠れてしまい、不利な状況を作る。そして、相手もスキを見つけると同時に物凄い侮辱を感じる行為だ。つかさずに添通は刀を振り上げて飛び上がり上段から斬りかかる。しかし、四資は素早く右旋回し腹部を斬り抜く。 「があ」 「これが餌に釣られた、古き愚かな産物よ」 その後四資の軍は土林城をたち、清和城に帰っていった。 土林城を落城させた頃、上下地域の各軍が二蔵の居城岩袋城に参陣していた。雅竹など各重臣らが集まる中、統賢の軍がいまだに参陣しなかった。 「統賢の野郎、遅すぎる!まさか寝坊しおったか?あの老いぼれめぇ斬ってやる」 「おい貴様ぁ統賢さまに対して言動が荒いぞ!あのお方は我らが第一家臣。目上の人を敬え」 統賢の遅れに武闘派で急上昇の出世をした雅竹が苛立っているのを、家臣の一人が注意をしたが・・・。獰猛な雅竹は飛び跳ね旋回蹴りで、注意した家臣を蹴り飛ばした。 「年功序列がそんなにも尊敬されるほど俺よりも強い事なのか?」 「があ・・・、まぁさ、げえ」 歯や顎に鼻の骨を蹴り砕かれてまともに話せない、家臣にさらに詰め寄り襲い掛かる。そんな雅竹を家臣らは、誰も止められなかった。その強さはいまだ未知数で、彼を止められるのが統賢だけである。統賢は強くは無いが言葉上手に説得していたのだが・・・。今回の様子から統賢に対する忠誠心は持ち合わせていなかった。そんな事情を知っていた四資は、5人の暗殺と統賢の足田城への攻撃を依頼していた。依頼に従って5人を暗殺し終えた漉・魅影・稟・雷・花冠の5人は桜火らの部隊に合流後、足田城に攻め込んでいた。 「殿、敵は少数なれど門を破壊後、城内へと侵入!個の力が圧倒的過ぎて我が軍に甚大な被害が・・・」 「そんなのあり得んぞ!まさか敵一人が雅竹並の力を備えているとでもいうのか?」 「岩袋城への参陣時刻も大いに経過しています。本体からの援軍も後しばらくかと・・・」 「そうしてくれると良いが・・・しないと・・・」 統賢が外へと向いた瞬間、大きな爆発音とともに光が建物を包み込んだ。統賢は一瞬の光に気を失ったが、怪我は無いが視界が白く染まっていた。しかしだんだんと視界は晴れて、回りを見渡せるまでに戻っていた。 「統賢殿、お気づきですか?」 「お、桜・・・火・・・・桜火!」 目を覚ますと、近くに桜火と綾と上げていた片手を下す雷が立っていた。周囲には千年・白蓮・漉・稟・魅影らが城の兵を次々と倒されていった。そのあまりの無残さから泣きながら桜火に、兵の命乞いをし始める。 「もうやめておくれ、わしはもう瓦礫で動けない、逃げない。もう決着はついたであろう!」 「二蔵の本隊がもうじきここに到着します。なので二蔵に見せつけなくてはならないのです。この圧倒的な差を!その為には犠牲になってもらい、殿にはすべて終えた後に殺しますので、しばしお待ちを」 顔をグネグネと動かしながら、殺されていく兵を見ていた。そして泣きつかれたかのように、放心状態となり最後の一人が死んだ。 「お疲れ様です。見印頂戴いたします」 そう言い残して、桜火は刀で心臓を突き。首を切り取りその場を立ち去った。 四資と桜火の襲撃に統賢の首、さらに一番の重臣の重北らが四資を迎え撃つと申して寝返った報告を聞いた源五郎は驚きに倒れた。倒れたことに母夫差も悲鳴を上げて、匍匐前進しながらズルズルと源五郎に駆け寄る。 「源五郎!我が子やぁあはは、しっかりしておくれ」 「母上、どうしまする?兄上が怒って攻めてくるぞ・・・」 「ひいい」 「こうなってはお終いじゃ、早く兄上に誤りに行こう」 「・・・そ、それはならん。行ったら殺される」 「そんなことは無い、兄弟では無いか!兄上も母上の子。小さき日々を共に過ごした仲!弟を殺すまい」 「源五郎さま、行ってはなりません。奥方様の申す通り、命の危険があります」 母や家臣が忠告するが、源五郎は耳に入れず。四資の待つ清和城に入り、四資と面会を願うも姿を現さなかった。主不在の隙をつく様に、四資は小間荷城を攻め落とし、母の夫差を捉えて小間荷城を居城に移す。それからひと月後、岩袋城にて二蔵の軍と激突。燃える城に乗り込み、襲い掛かる雅竹を火の海に突き飛ばし、自らの手で兄である二蔵を殺した。その後戦によって人の死を目にし、衰弱した母夫差を幽閉している源五郎の前に突き出した。 「は、母上・・・・あ、あああああああ!兄上!」 近くにあった刀を掴み取り、四資に斬りかるも、四資がすぐに両断。溺愛の息子源五郎の死に、母夫差はその場で急死。その後、四資は家督と守人を引き継いだ。これに兄弟で争われた戦争が終結した。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!