3 銀色の髪を持つ王子

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「あ……」  再び顔を赤く染めるミサキを見て、ミハイルはほっと柔らかい笑みを浮かべた。そしてそっとミサキに近づき白くて細い肩を抱き……顔を近づける。 「んっ……」  ミサキとミハイル、お互いの唇同士が触れあった。咄嗟にミサキが目を閉じると、ミハイルはその閉ざされた唇に舌を押し付け、咥内に割って潜り込んだ。  ミサイルの舌先が、ミサキのそれに触れる。ミハイルが絡みつくと、ミサキもおずおずと震えながら……そっと舌を伸ばした。  その拙いだけの動きに、ミハイルははっと目を丸めた。今まで感じたことのない様な感情が、頭の中でぐるぐると駆け巡る。それをかき消すようにミサキの舌、そして咥内を大きく貪っていった。 「はあ……っ」 「……口づけを、交わしていない気がしたので。嫌でしたか?」  ミサキの耳が赤い。小さく首を横に振るその仕草を見て、ミハイルの胸がまたじりじりと痛んだ。その痛みに気付かないふりをして、ミハイルは立ち上がる。 「さて、早く寝室に戻りましょう。今日は疲れたでしょう? 早く休んだ方がいい」 「はい、あの……」 「ああ、着替えなら見ませんよ」  ミサキはマントで体を隠しながら、テーブルの上の着替えを手に取り本棚の死角に入り込む。 「あの、ミハイル……」 「どうかしましたか、ミサキ」 「あの……本、読めるようにしてくれて、ありがとうございます」 「そんなことでしたか」  ただの戯れだ。  彼女に恩を売り、自らの元に引き寄せる。たったそのためだけの行為だった。それなのに、喜色が混じるそのミサキの言葉が、ミハイルの胸の中でぽっと灯った。  その炎の意味に彼が気付かぬまま、夜は更けていく一方だった。
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