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第4話
高山は、夜中にもう一度「小説GO」のウェブサイトを開くと、メッセージがすでに届いていた。昨日は、講義を聞くふりをしながら読んでいたが、読み終わるのが夜の7時ごろになってしまい、あのメッセージを送ったのも少し遅い時間になっていた。だから、すでに返事が来ていたことには驚いたが、話が速くて悪いことがあるわけではない。
メッセージを読むと、ライトノベルの共同制作の件を了承してくれていた。よかった。まずは一安心である。その後には、どうして自分の描いた女の子にニーソを履かせているのかという質問があった。愚問である。それはニーソが好きだからに決まっている。電子レンジ氏も同じような人種だと思っていたけれど、違っていたのだろうか。
まぁいい。了承してくれたのだから。急ぐ必要はないけれど、次のステップへ進んでいこう。明日からは、メインキャラクターになる女の子を描いていかなければ。そう考えながら、高山は布団の中に潜り込み、その日は、眠ったのだった。
次の日の朝、高山は、2限の講義に向けてのんびりと朝の仕度をしていた。10時過ぎに高野川沿いにある下宿を出て歩いていると、出町柳駅の前を通ったところで見覚えのある人影を発見した。その人とは、横山さんである。背は小さく、ショートカットがかわいらしい。向こうも高山の存在に気づいたようで、こちらが手を振ると、横山さんも手を振って駆け寄ってきた。
「おはよう」
「おはよう。今日寒いね」
高山と横山さんは、2人とも「鴨川を散歩する会」というサークルに所属している。鴨川をのんびり散歩し、みんなでお弁当を食べたりするサークルで、4回生まであわせて20名ほど在籍しており、毎週土曜日に活動している。高山と横山さんは、そのサークルの中で学年が同じということで、他の同期を含め仲良くなったのだった。
「高山くんは、今、順調なん?」
「え? ああ、まぁ、ぼちぼちかな」
横山さんがにやにやしながら不意に尋ねてきたので、高山は、笑顔は作っていたが、内心ではぎくりとし、答え方も少し歯切れの悪いものになってしまう。
「うまくいくとええな!」
「いや、まぁ、どうですかねぇ」
横山さんはとても楽しそうに笑っている一方で、高山も笑って合わせようとするが、どこかぎこちないものになる。そのことを考えると、一気に緊張してしまうのだ。こちらの気も知らないで……と若干ため息をつきながらも、一方で何かと協力してもらったので彼女には感謝しているのだった。
しばらく2人で歩くと、百万遍の交差点に差しかかり、北東角を経由して古都大学敷地内へ入っていく。百万遍南東の角には、石垣があり、その周りに立て看板があるのだが、その近くから歩行者専用の通路が設置されていて、2人はその通路へ入っていった。
その通路を歩いていると、高山はなにやら視線を感じたので自分の前方へ目を向けた。すると自転車に乗った男子学生がこちらを見ていた。その男子学生はすぐ前を向いてしまったので顔はよく分からなかったが、髪はぼさぼさでくたびれたトレーナー着て、くたびれたジーンズを履いていた。メガネもかけていた。高山は、彼が自分と同類だと思った。
その後、高山は横山さんと別れ、独り文学部棟へと向かった。今日は昼に重要な用事があるのだ。高山は、そのことで頭がいっぱいで、さきほどの男子学生のことなどすっかり忘れてしまった。
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