第1話

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第1話

 佐久間雅弘は、ある日の夜、小説投稿サイト「小説GO」で、自身が書いて投稿した小説に何かコメントはついていないか、あるいは、誰か読んでくれた人はいないかを見ていたところ、自分の小説に1件のコメントが来ていることに気づいた。  嬉々としてそのコメントを読んでみると、そこには、こう書かれていた。 「私は、イラストを描いている者ですが、ぜひ、あなたが、私の描いた女の子を題材にしたライトノベルを書いていただけませんか」  そのコメントの主は、ファブリースとかいう、知的財産権を侵害しているのかしていないのか、よく分からないアカウント名を使用していた。佐久間は、全く面識のないのにいきなりラノベを書いてくれと申し込んできたその人がどんな人なのかが気になって、ファブリースのリンクをクリックして、ファブリースなる人のページを閲覧した。すると、過去に2作ほど小説を投稿しているようで、また、自身のつぶやきを投稿するSNSアカウント及びイラスト投稿サイト「イラストUP!」のアカウントを載せていることが分かった。  つぶやき投稿型SNSを見てみると、その人をフォローしている人は少なかったが、ほとんどいないも同然、というほどでもない。佐久間は、その人がどんなイラストを描いているのか気になって、イラスト投稿サイトを開き、彼の投稿しているイラストを閲覧した。  URLをクリックすると「ファブリース」の「マイページ」が開かれた。上部には、アカウント名とその人のアイコンが堂々と中央に大きく表示されている。その下にその人が投稿したイラストが整然と並んでいた。下にスクロールすると、さながらイラストが行進していくようである。  その人のイラストは、全く下手というわけではなかったけれど、うまくはなかった。イラストは人物が多く、全体のバランスがおかしいわけではないが、いやバランスもおかしいのかもしれないが、身体の細部に違和感がある。衣服もペラペラでそこだけ立体感がなく、衣服の端が刃物のように鋭利になっている。それが理由なのか、キャラクター自体は自分で創作しているようで、佐久間が見たこともないものばかりであるのに、あれ、なんか違うなと感じさせる。というより、本人が本当に描きたいのも、そのような絵ではないだろう。キャラクターは、おそらく全員女の子だと思われるが、どうも顔がゴリラに見えた。  佐久間は、困惑した。ひとまず、ファブリースなる人物と連絡を取るべきである。しかし、なぜその人は、あの絵を描いていて自分にラノベを書いてもらおうと思ったのか、理解に苦しむ。自分の立場がきっと分かっていないのかもしれない。  そう考えた佐久間は、小説GOに設定されている会員専用の無料メッセージ送受信機能を利用し、その人にメッセージを送った。 「こんにちは、ファブリースさん。電子レンジです。 私の小説にメッセージを送ってくださって、ありがとうございます。ライトノベルを書くことに誘ってくださってとても嬉しく思っています。ぜひライトノベルをご一緒に作成させていただければと思います。  ところで、私は、あなたに1つ質問があります。なぜあなたの描いている女の子はみんな、ニーソックスをはいているのですか」
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