溶かされゆく理性

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「これからどうする?どこか飲みにいく?」 「んー、飲みにいく気分じゃないなぁ」 「じゃあ俺の家行こっか。ここから近いし」 「あ、そうなの?じゃあそうしようかな」 四年前までは何かと関わりがあったため、互いの家にも平気で上がっていた。 だから今回も、抵抗なしに彼についていく。 これの家は新築アパートの一室で、外装に劣らず家の中も綺麗で整頓されていた。 「男の部屋とは思えないね」 イケナイ本とか一切ない。 本棚には文芸本やビジネス本が並んでいる。 「あんまりそういうのに興味がないんだよ」 確かに昔から、悠は異性にあまり興味がなかった。 高校生の時に一度だけ彼女ができたけれど、その人と別れて以降、悠の恋人事情は知らない。 モテるのに、本当にもったいない。 この言葉は今まで彼に何度もぶつけていた。 「そうなんだ。この四年間に彼女はできた?」 「……まぁ、うん。何人かは……多分」 歯切れの悪い話し方。 きっと、あまり触れて欲しくないのだろう。 「じゃあ何か飲む?」 「うーん、いいや。今はお酒の気分じゃないし」 どちらかというと、お酒の力を借りずにのんびり過ごしたい。 もしお酒を飲んでしまえば、本音を全部こぼして悠に迷惑をかけかねない。
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